よくわかる「PayPay」──これからの小売ビジネスを図解する(1)

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よくわかる「PayPay」──これからの小売ビジネスを図解する(1)

Text : ビジネス図解研究所:かないりょうすけ / Editor : 佐々木将史

世は決済サービス戦国時代。「Pay」と名のつくサービスが巷に溢れ、人々のスマートフォンには何種類もの決済アプリが詰まっている。

その中でも、「100億円キャッシュバック」と銘打ち、2018年12月に大々的なキャンペーンを行った「PayPay」は記憶に新しい。筆者も例に漏れず、PayPayを使いビックカメラでNintendo Switchを買った。売り場にうずまく買い物への熱量は、いままで経験したことがないほど強烈だったことを覚えている。

今回は、そんなPayPayのビジネスモデルを図解するとともに、決済サービスの現状を読み解いてみたい。

(※なお、2019年2月現在、第2回目の100億円キャンペーンが、第1回目とは内容を変えて開催されている。話が複雑になるのを避けるため、本稿では「100億円キャンペーン」は第1回を指すこととする)

PayPayの仕組み

お金の出どころは3種類から選べる

PayPayでは、ユーザーは決済を以下3つの方法から選択できる。

・PayPay残高
・クレジットカード
・Yahoo!ポイント

PayPay残高の場合、チャージは銀行口座からの引き落としのみ可能であるため、あらかじめ口座をアプリに登録しておく必要がある。他の2つは、事前にアカウントを連携させておけばよい。

支払い方法も2種類ある

店頭での支払いには、QRコードによる2つの方式が用意されている。

・バーコード方式

ユーザーのアプリで生成されるQRコード(またはバーコード)を、店舗側の機器でスキャンして決済する。この場合、店舗はスキャン用の機器を有料で導入する必要がある。

<図解1:バーコード方式>

・スキャン方式

店舗に用意されているQRコードを、ユーザーのアプリでスキャンして決済する。読み込むコードは、運営会社から店舗に送られてくる専用のものを使用。

<図解2:スキャン方式>

ただし、ユーザーはQRコードをスキャンしたあと、「金額を自分で入力」→「店舗側の確認」→「決済完了」のステップを踏まなければならない。

PayPay残高にポイント還元(決済額の0.5%)

PayPayでは、支払方法にかかわらず、決済額の0.5%がポイントとしてユーザーのPayPay残高に還元される。100億円キャンペーンでは、この還元率が最低20%に引き上げられ(また、他にもいくつかの特典が組み合わされ)、ユーザーにPayPayを利用してもらう後押しとなったわけだ。

なぜQRコード決済なのか、そしてなぜ店舗はPayPayを導入するのか?

現金、クレジットカード、非接触型決済(Suica、FeliCaなど)の決済手段に比べて、QRコード決済の広がりはここ最近の顕著な動きといえる。だが、複数の決済手段がすでに存在しているなかで、あえて今、店舗がPayPayを導入するには相応のメリットがないと難しいだろう。

この章では、QRコード決済が広がる背景と、PayPayの戦略を考察したい。

QRコードの利点を活かしたPayPayの導入戦略

一般的に、QRコード決済は、店舗の導入コストがかからないのが利点だと言われている。例えば、クレジットカードや非接触型決済は専用のハードウェアを新たに設置する必要がある。だが、QRコードをスキャンする機能は、現行のスマートフォンには搭載されていることが多く、店舗は専用のQRコードを用意するだけで決済が可能となるのだ。

PayPayでも、「スキャン方式」ならば初期費用がかからない。コストを理由にクレジットカードや非接触型決済を導入していなかった小型店舗への普及が進むことは、大いにあり得るだろう。

逆に、店舗に機器を設置しなければならない「バーコード方式」は、導入費が発生するプラン設定だ。運営側も、機器の導入は通信環境の調整などの負担が多い。そのため、双方にとってローコストな方法であるスキャン方式でのサービス普及を目指していることがわかる。

「Alipay」との提携にみるQRコード決済大国、中国との親和性

もうひとつ、店舗でQRコード決済が広がる理由には、インバウンド消費の取り込みが挙げられる。中国で既に普及しているQRコード決済を導入することで、中国人観光客にスムーズな決済を提供でき、買い物の促進が期待できる。

PayPayでも、中国における代表的なスマホ決済サービス「Alipay」との提携が開始されており、PayPay加盟店において、AlipayユーザーによるQRコード決済が可能だ。

(※「Alipay」は世界最大のモバイル及びオンライン決済プラットフォームで、中国国内のアクティブユーザー数は7億人を超える

とどめの100億円キャンペーン

そしてなんといっても、100億円キャンペーンによる利用の後押しである。

店舗側からすれば、コストがかからず100億円規模の消費の波に乗れるのだ。導入して損はないどころか、得しかない。

実際に、PayPay導入がアナウンスされている企業は続々と増えつつある。この流れにキャンペーンの熱狂が与えた影響は、大きいはずだ。

手数料はタダ。儲け度外視の先行投資は実を結ぶか

PayPayは現在、店舗の決済手数料・入金手数料をゼロ円にしている。

(※決済手数料は「スキャン方式」のみで、2021年9月30日まで。入金手数料は、ジャパンネット銀行の場合は永年、その他銀行の場合は2019年9月30日までとなっている)

つまり、現時点でPayPayはほとんど儲けていないことになる。今回、儲けがない中でさらに100億ものお金をつぎ込んでキャンペーンを打ち出したわけだが、これはひとえに導入店舗とユーザーを増やさなければ、決済サービスの覇権争いのスタートラインにも立てないからだ。

LINE Pay、楽天Pay、Origami PayといったQR決済サービスのみならず、非接触型決済やクレジットカード決済、さらに言えば現金までもがPayPayのライバルになる。

ユーザーの「いつも使う決済手段」のポジションを獲得するために、どんな戦略が打ち出されるのか。果たしてPayPayは覇権を握ることができるのか。決済サービス戦国時代の行く末に、これからも目が離せない。