よくわかる「Luckin Coffee」——これからの小売ビジネスを図解する(2)

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よくわかる「Luckin Coffee」——これからの小売ビジネスを図解する(2)

Text : ビジネス図解研究所:たかはし ひろみ / Editor : 吹原紗矢佳

「Luckin Coffee(瑞幸咖啡)」は、2017年10月に創業した中国のコーヒーチェーン店。リアル店舗とテクノロジーを融合した、新しい形の店舗だ。2018年1月に北京で1号店をオープンし、2018年末には2,000店舗にまで拡大するという急成長を遂げている。

本記事では、Luckin Coffeeがどのようにしてリアル店舗とテクノロジーを融合させたのかを図解と共に解説していこう。

モバイルオーダーがカギを握るLuckin Coffeeのビジネスモデル

これまでのコーヒーショップでは、店舗のレジカウンターで注文し、コーヒーを淹れてもらうまでに待ち時間があった。しかし、Luckin Coffeeはアプリを活用することでこの流れを大きく変えた。

オーダーから決済までアプリで完結

AppStoreより引用

まず、アプリを開くと注文可能な店舗が表示される。「店舗受け取り」か「配達」から選び、メニューとオプションを決定する。支払いはアプリ上でWeChatPayかAlipayを通じて事前に行う。

店舗受け取りの場合は、注文が完了するとできあがりまでの予定時間が表示され、商品が用意できるとアプリに通知が届く。あとは、アプリに表示されるQRコードを、店舗に設置されている読み取り機にかざすだけでよい。通勤途中でコーヒーを一杯買っていきたいときにも、待ち時間なく受け取れるのだ。

店舗の効率化によるコスト削減

アプリ上で注文から支払いまで完了するので、店舗にはメニュー表はおろか、注文カウンターやレジもない。そのため、店舗面積を有効に活用できるようになった。また、注文やレジ対応の必要がないので、スタッフはコーヒーを淹れることに専念できる。狭い店舗面積でも最大の利益を得られるような仕組みを作り上げた。

徹底的にコストを削減することで、Luckin Coffeeはトールサイズのカフェラテを一杯24元(約395円)で提供することが可能になった。スターバックスは31元(約510円)なので手頃な価格といえる。

Luckin Coffeeの店舗のあり方は、中国で市場を拡大してきたスタバと比較すると大きく異なる。スタバが居心地の良さをコンセプトとしているのに対して、Luckin Coffeeは「場所にはこだわらない」としている。ビジネス街を中心に店舗を構えており、その半数近くはピックアップ専門店だ。

Luckin Coffeeのクーポン施策

ユーザーがLuckin Coffeeで買いたくなる仕組みの一つにクーポンがある。クーポンはアプリ上で通知され「友達紹介で1杯無料」「5杯購入で5杯無料」など、ユーザー拡大のためのキャンペーンが頻繁に行われている。

しかし、昨年度このクーポンキャンペーンに対して懸念の声が上がった。Qdailyによると、2018年からの9ヶ月間で8億5,700万人民元(約140億円)の純損失が発表されたのだ。加えて、クーポン配布後のユーザー定着率も明かされていない。

中国では、クーポンのばら撒きによる収益の低下で廃業に追い込まれるスタートアップは少なくない。無料でなくともコーヒーを買う「本当のファン」を獲得できるのか、Luckin Coffeeの真価が問われるポイントといえるだろう。

中国のオフラインサービスの今後

中国では、モバイルペイメントとQRコードの普及により、オフラインサービスの支払いも簡単にできるようになった。出かけるときにはスマートフォンひとつで買い物ができる環境になっている。言い換えれば、これからはオフラインサービスもオンラインで完結するようなサービス設計が必要になるということだ。

このような考え方はOMO(Online Merges with Offline)呼ばれている。中国ではLuckin Coffeeの他にも、Alibabaが運営するスーパー「盒馬鲜生(フーマーシェンション)」があげられる。

盒馬鲜生はリアル店舗ながらも、ECのための倉庫としての役割も担っている。オンラインから注文が入れば、駐在しているスタッフが袋を持って商品を取りに行く。取り終わった袋はベルトコンベアーに乗せられて配達員へ、そして30分で顧客のもとに届けられる。店舗にはフードコートが設置されており、気に入った料理はスマホからレシピを見ることができ、その食材を丸ごと購入できる。

中国の事例から読み解けるのは、リアル店舗にテクノロジーを導入するという目的だけではなく、そこからどのような顧客体験が創造できるかに、真の価値が置かれているという事実なのだろう。

Eコマースのデザイン/開発をしています。ビジネス図解研究所所属。ビジネスとデザインの話が好き。社会人1年目に香水の会社にバイヤーとして入社、EC事業部に移動してECの楽しさを知る。Webデザイナー/コーダーを経験したのち、ファッションECに、現在は家具のサブスクECサイトに携わっています。

ビジネス図解研究所:たかはし ひろみ

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