フランチャイズでも長時間滞在でも儲かる、コメダの成功方程式 

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フランチャイズでも長時間滞在でも儲かる、コメダの成功方程式 

Text : おぐら まみ / Editor : 吹原紗矢佳

レンガの壁に三角屋根、黒地にオレンジ文字の看板。初めて訪れる街でも、通りかかれば一目でわかる、入ればほっとひと息つく場所。喫茶店文化の根強い名古屋では欠かせない存在と言っても過言ではない「コメダ珈琲店」が成長を続けている。

コメダは先進的でキャッチー、というよりは古き良き「変わらなさ」を感じる喫茶店チェーンだ。セルフ式のカフェが増える中、今でも対人の接客スタイルを崩さない。
喫茶店経営を主な事業としている1,180社を対象とした帝国データバンクの調査によると、2017年の喫茶店・カフェ経営業者1,180社の売上高合計は6,415億3200万円。このうち、100億円以上の売上高があるのはたったの10社だ。中でも、コメダは増収率でトップを獲っている。

ここに隠された戦略とは一体どんなものだろうか。伸び続けるコメダの成功方程式をまずは読み解いてみよう。

・フランチャイズ展開に注力した急速な店舗数拡大
・店舗数増と食品卸による、営業利益率の高い収益構造
・徹底されたフードメニューのコストカット
・長時間滞在されても儲けを出す工夫

これらの成功方程式を、データから追っていく。

店舗数拡大の仕掛け

コメダ喫茶店公式サイトより引用

1968年、名古屋市内に「コメダ珈琲店」は生まれた。1993年に株式会社化、フランチャイズ展開を本格化していく。2008年には経営が創業者の手から投資ファンドへと継承され、その勢いは加速した。

コメダの店舗数は全国で800店舗を超えるが、直営店はわずか2%である。フランチャイズ店は開店に必要な資金をオーナーが負担するため、本部が直営店を増やすよりも出店コストが抑えられる。そのため、店舗数を一気に拡大することが可能だ。

フランチャイズ店のオーナーはリスクが大きい反面、権限も強い。本部へ支払うロイヤリティは売上に比例するのではなく、1席あたり1,500円の定額であることがコメダの特徴だ。地域特性や立地によって現場の創意工夫が認められており、フランチャイズ店舗の努力が実りやすい。

驚異の営業利益率

コメダホールディングスの2015年~2018年の決算書によると、営業利益率は約30%という高さだ。2016年のドトールが7.6%、2017年のルノワールが3.9%であることと比較すると、驚異的である。飲食業界全体でも営業利益率の平均は8.6%、たとえ上場企業といえど、10%を超えるのは容易ではない。

しかし、コメダは直営店舗数が少なく、フランチャイズ店からのロイヤリティは定額である。そんな中で、いかにして驚異の営業利益率を確保しているのか。大きな要因は、食材の卸売販売によるものだ。フランチャイズ店へのパンやコーヒーの卸売による利益は、売上収益の約70%を占める。

ドミナント的な出店もコメダの特徴で、近いエリアに集中的に店舗が位置するため食材卸の配送コストも抑えられている。

コメダ喫茶店公式サイトより引用

徹底的にコストを抑えたフードメニュー

コメダで人気のオリジナルメニューといえば、温かいデニッシュパンソフトクリームを乗せた「シロノワール」。他にもサンドウィッチやピザ、ホットドックなどパン系のフードはバリエーションも豊かで、ボリュームもある。

いずれもパンは自社工場で製造、各店舗が購入して直接配送されるため、流通コストや中間マージンを抑えられる。他の食材も種類を減らし、単一の材料を多くのメニューに使うことで、さらにコストを下げている。

また、コーヒーは自社工場で焙煎・抽出し、各店舗へ配送している。店舗や淹れる人で味のブレがなく、厨房に必要な人数も減るので、人件費を抑えられる。

くつろぎ空間へのこだわり

コーヒーとともに「くつろぎの空間と時間」を提供することは、コメダの経営理念そのものだ。

“私たちは「珈琲を大切にする心から」を通してお客様に「くつろぐ、いちばんいいところ」を提供します”

店内は明るく、天井の高い開放感のある空間。ベロア調で座り心地のよいソファ席は、長時間滞在していても苦にならない。店内に木材や漆喰、レンガを多用しているのは、「木視率」を高めて“安らぎ”を感じてもらうためだ。

木視率とは、建築用語で「屋内で視界に入る木肌(表面に木材の使われている部分)比率」を表す。この木視率は一般住宅で20%程度だが、40%以上になると人間は落ち着きを感じると言われている。

自然であたたかみのあるフルサービスの接客のために、スタッフ教育にも手を抜かない。多数の新聞・雑誌などを常備するなど、長居できる店舗設計を徹底しているのだ。

飲食店は回転率を上げることに注力しがちだが、効率化されたフードメニューによって、フルサービスで顧客がゆったりと長時間過ごしても高い利益を維持できる。

コメダ喫茶店公式サイトより引用

成長を続けるコメダと拡大する市場

2016年、コメダホールディングスは「2020年度に1,000店体制を目指す」と表明し、株主から注目を集めた。当時、東海圏と比較して手薄だった西日本・東日本に加え、北海道・九州にも店舗拡大を進めてきた。残すは沖縄県と青森県となり、2018年2月期決算説明会にて両県への進出が進められていることが述べられている。

海外ではすでに店舗のあった上海の店舗増に加え、2018年2月には台湾に直営店を出店。9月には現地法人と合弁会社を立ち上げることが発表され、台湾でのビジネスモデルの確立と店舗数の拡大を目指している。

コメダがフランチャイズ展開を加速させた2000年代後半は、スターバックスやドトールといったセルフ式のコーヒーチェーンが流行し、コメダのようなフルサービスの喫茶店は苦境に立たされていた時代である。

そんな中で「逆張り」とも言える戦略をとって成長してきたのがコメダだ。スターバックスの大半が直営店なのに比べ、コメダの直営店はわずか。メニューはわかりやすく流行に迎合し過ぎないスタイルだ。ドトールが回転率を上げる戦略なのに対し、コメダは長時間滞在を歓迎する。

コメダの成功モデルが確立して以降、類似スタイルの喫茶チェーンが急増した。郊外型のコーヒーショップの市場規模は2008年に617億円、2017年には倍以上の1,338億円へと成長し、今後も伸びる見込みである。

今年でコメダは創業50周年を迎える。業界のロールモデルになりつつあるコメダのビジネスモデルに、今後も注目したい。

北海道出身工学部卒、愛知県在住の「専門外の人にもわかりやすく伝える」フリーライター。地域やテクノロジー、ビジネスが中心。コワーキングスペースのスタッフとして創業や情報発信の支援も行う。

おぐら まみ

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