よくわかる「メルカリ」と「メルペイ」——これからの小売ビジネスを図解する(5)

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よくわかる「メルカリ」と「メルペイ」——これからの小売ビジネスを図解する(5)

Text : ビジネス図解研究所:かないりょうすけ / Editor : 佐々木将史

2019年6月に東証マザーズ市場に株式上場したことも記憶に新しい、株式会社メルカリ。公募価格3,000円に対して初値は5,000円、時価総額も約6,760億円と今年最大の新規公開となり、株式市場からの十分な評価を証明した。

8月に発表された2019年6月期の決算では、連結売上高が516億円(前年比+44.5%)、同社の主力サービス「メルカリ」の月間アクティブユーザーは1,357万人(前年同期比+26.2%)と確実な成長を示している。

本記事では、その「メルカリ」と、今年2月からサービスが開始された「メルペイ」(100%子会社であるメルペイ株式会社が運営)の2つのサービスの仕組み、および関係性を解説していく。

フリマアプリの大手「メルカリ」のサービススキーム

メルカリは、フリーマーケットのプラットフォームアプリケーションだ。インターネットを介して、登録したユーザーが売り手にも書い手にもなれる。

CtoC売買のプラットフォームでは、「ヤフオク!」も有名だ。しかし、出品価格より高額での落札になることが多いオークション形式のヤフオクに対して、メルカリはフリーマーケット形式をとり、基本的には出品価格で売買が成立する(逆に、交渉によって値下げが発生する場合はある)。

メルカリの特徴は、次のサービススキームにある。

  1. 買い手からメルカリに「購入代金」が支払われてから、売り手は商品を発送する(メルカリが代金を一時的に預かる状態となる)
  2. 商品の受け取り後、買い手による「取引相手の評価」が完了して初めて、売り手のアカウントにメルカリが売上金を反映させる

これにより、「商品を渡したのに入金されない」あるいは「入金したのに商品が届かない」「掲載内容と異なるものが届く」といった、個人間の売買に伴うリスクを回避できる。

また、メルカリ自体は事務局として手数料をもらうことで、このビジネスを成立させている。メルカリのマネタイズポイントは、大きく3点挙げられる。

  • 購入代金が支払われるとき(コンビニ/ATM/通信キャリア決済の場合のみ100円)
  • 商品の売買が完了したとき(取引価格の10%を売り手から。出品は無料)
  • 売り手が、売上金を自分の振込用銀行口座に振り込むとき(一律200円)

売り手から見れば、取引価格の90%から振込手数料が差し引かれた金額が、現金化した場合に手元に残る仕組みだ。

メルカリユーザーの利便性を拡張する決済機能「メルペイ」

メルペイとは、メルカリアプリ内に存在する『メルカリ以外の提携店舗・サービスでつかえる決済機能』だ。「QRコード決済」サービスの一つとして認識されることも多いが、実は“メルペイ”という名前のアプリがあるわけではない。

メルカリアプリの中には現在、フリマの売上である「売上金」(取引価格の90%)とは別に、「メルペイ残高」というお金の概念ができている。メルペイで決済すると、この残高から代金が差し引かれる仕組みだ。

メルカリの売り手は、アプリ内で「かんたん本人確認」または「(チャージ用)銀行口座登録」を行うと、フリマの「売上金」と「メルペイ残高」を自動で連携できる。どちらも行わない場合は、後述の振込申請期限内に、改めて売上金で「メルカリポイント」(※)を購入するか、200円の手数料を払って銀行口座に振り込む必要がある。

(※メルカリには従来からのポイントという概念も残されており、「1ポイント=1円」で、メルカリ内での商品の購入や、あとからメルペイ残高への変換もできる)

メルペイ残高に変換するための売上金やポイントが不足している場合は、連携する銀行口座から直接チャージして使用すればよい。チャージの最低金額は1,000円で、手数料は不要だ。

また、「メルペイあと払い」という、その月のメルペイでの決済分を、翌月まとめて支払えるサービスも用意されている。この場合、メルペイ残高からではなく、コンビニ/ATMでの支払いや口座振替といった方法を選択すると、 300円の手数料がかかる。

メルペイの利用時にユーザーの負担する費用は、この際の手数料を除いて無料だ。提携店舗の側から、決済額の1.5%をメルペイが受け取るビジネスモデルになっている。

メルペイによる「ユーザーメリット追求」×「ビジネスモデル強化」

そもそもメルカリの売上金には、「180日」の振込申請期限がある。ユーザーがポイントを購入せずにその期限に到達した場合、自動で口座に振り込まれるルールだ。

つまりこれまでは、ユーザーは売上金を、200円の手数料が引かれたとしても流動性の高い現金に変えるか、手数料はかからないが“メルカリサービス圏内でしか使用できない”ポイントに変換するかで、常に選ばなければならなかった。

しかし、メルペイが開始されたことによって、売上金はメルペイ残高として(ユーザーが「かんたん本人確認」または「銀行口座登録」することで)自動連携され、180日の振込申請期限もなくなる。ユーザーは「売上金を減らさずに」「メルカリ以外の店舗・サービスでも使用できる」新たな選択肢を持つことができたのだ。

ビジネスモデルの観点からも、これまでメルカリがtoCからの手数料でマネタイズしていたのが、メルペイによって、toBからのマネタイズもできるようになったことは興味深い。同時に、ユーザーが売上金をメルペイ残高に連携するための、本人確認と口座登録がもたらすものも大きいだろう。ユーザーの信用度が担保され、メルカリプラットフォームの治安向上に繋がるからだ。

そうした設計の緻密さから見るに、メルカリ&メルペイには、ビジネスモデルとしての強化と、ユーザーにとってのメリット追求という2つの側面が、高度に実現されているように思う。

3月には「LINE Pay」との提携店舗の相互開放が発表され、キャッシュレスそのものへの普及を進めようという動きも見て取れる。同じ「ペイ」サービスとして括られていた2つが手を組むことは意外だったが、フリマアプリの売上を基点にするメルペイとしては、顧客基盤の大きなLINE Payと手を組むのは効果的な一手だとも感じた。

同サービスがこれから世の中にどんなことを仕掛けていくのか、楽しみは尽きない。