よくわかる「Amazon Go」——これからの小売ビジネスを図解する(3) 

series

よくわかる「Amazon Go」——これからの小売ビジネスを図解する(3) 

Text : ビジネス図解研究所:沖山 誠(きょん) / Editor : 佐々木将史

Amazon Go(アマゾン・ゴー)」は、2016年12月にAmazonが発表して話題を呼んだ“レジなし”のコンビニだ。

1号店は今年2018年1月にシアトルでオープンし、2019年5月時点でシアトルに4店舗、シカゴに4店舗、サンフランシスコに3店舗、ニューヨークに1店舗ある。また、同社には今後2021年までに、Amazon Goを最大3,000店舗まで増やす計画があることを、米メディアのBloombergが報道している

話題に事欠かないAmazon Goだが、いったい何が革新的だったのか。その仕組みを図解とともに読みといていきたい。

ストレスフリーな“レジなし”コンビニの仕組み

店舗での買い物で、「レジの行列」は顧客がストレスを感じやすいことだ。長蛇の列を見て、店に入ることすら諦めた方もいるのではないだろうか。

店舗から出る直前に時間のかかる会計をせざるを得ない、従来の構造では避けられなかった問題に、Amazonはテクノロジーを駆使して解決に挑んでいる。それが「レジの無人化システム」だ。

利用客が入店するときには、スマートフォンに表示したコードを認証させる必要があるが、一度入ったら欲しいものを手に取り、店舗を出るだけ。退店すれば、そのまま端末に紐づいたクレジットカードで自動的に会計が完了する。

買い物客は店内で支払いをしなくてもよくなり、気軽で楽しい買い物体験ができる──それが、Amazon Goだ。

Amazon Goのキモは、入店客の行動を解析するシステムだ。店内に人の動きをトラッキング(追跡)できるカメラやセンサーが多数あり、買い物中の行動を常に観察して、どの商品を購入したのかわかるようになっている。システムにはAIによるディープラーニングの技術も使われている模様で、特許も取得されている

このことから、Amazonは「レジで並ばなくてもいい」という利便性を提供するのと引き換えに、店内のセンサーから「実店舗での行動データを手に入れたい」と考えている、とも読み解ける。

同社はこれまで、ECを通じて購買データをオンラインで獲得してきた。近年では「Amazon Echo」などの新しいデバイスによって顧客の行動データを取得できるポイントを拡張しているが、Amazon Goもその戦略の一環といえる。オンラインだけでなく、オフラインでの行動を把握し、商品やサービスの購買により一層つなげていきたいということだろう

ただの効率化だけじゃない。目的は「快適な購買体験」

店舗の運営面では、店員によるレジ業務が不要になり、運営コストの削減や人手不足などを解消できるようになる。

ただし、Amazon Goは単に効率性を追求したシステムではない。レジ業務の自動化によって、店員はタイムラグのない在庫補充を実現させたり、買い物客とのコミュニケーションの機会を増やしたりできる。また、注文に応じた対面サービスができるといった、サービスの質を高めることにも注力できるようになる。

つまり、Amazon Goの目的は顧客の不満を取り除き、満足度を高めて「快適な購買体験を提供する」ことなのだろう。その意味では、まさにAmazonが掲げる「顧客第一主義」の姿勢を体現したサービスともいえる。

従来のコンビニは、限られた店舗スペースに最小限の労力で、いかに売れ筋の商品を多く提供できるかに力点を置いてきた。つまり、「商品」起点でのサービスを展開していたといえる。

しかし、“レジなし”コンビニであれば、サービスの充実に力を注ぎ、購買の快適性を作り上げることに集中できる。顧客の負担を軽減し、いかに付加価値を提供するかという「体験」起点での追求が可能になった。

Amazon Goは今、コンビニの提供価値を「モノ」から「コト」へと変える、サービスの発想の転換を引き起こしつつあるのである。

“無人”は今後のトレンドになるか

海外に目を向けると、中国では無人コンビニの開発が盛んで、「BingoBox」という無人コンビニが注目を集めている。米国でもスタートアップ企業がいくつも生まれ、Standard CognitionZippinCaperなどのテック企業が続々と参入している。

国内では、日本では、ローソンがスマホで支払いが完結するセルフ決済「ローソンスマホペイ」を導入。また、スタートアップである600(ロッピャク)が、オフィス向けキャッシュレス無人コンビニを開発し、話題となっている。

オフィス向け無人コンビニ「600

上記のような競争は激化し、またその仕組みも多様化している。しかし、そこで本当にカギを握るのは、そのサービスがいかに顧客に対して付加価値を生み出せるか、ということだろう。

Amazon Goが、“レジなし”コンビニとしてこれまでのコンビニビジネスの発想を転換させ、「モノ」から「コト」の提供へその軸を移そうとしていることはすでに述べた通りだ。こうした状況において、「どのように利便性を提供できるのか?」だけでなく、「いかに顧客体験を創り出すか?」を考えることが競争優位の源泉になる。

従来のような「モノ」起点で利便性を追求しようとする発想では、実店舗はもはやECの利便性には勝つことはできない。今は数ある商品から必要なものを、ネット上でボタン一つで購入できる。さらに、注文したらすぐ手元に届く。欲しいものを効率よく手に入れる目的だけでは、わざわざ店舗へ立ち寄る必要がないのだ。

「顧客第一主義」の姿勢を一貫しているAmazonのように、あえてオフラインの店舗に行きたいと思える体験を作り出せるか。何が顧客にとっての価値になるのか。それを追求できる者が、今後の競争を制するだろう。

1995年生まれ。大学を卒業後、経営コンサルタントとして新卒で勤務。その後、「ビジネス×図解」をコンセプトとしたビジネス図解研究所というコミュニティに参加。その活動内容と理念に共感し、2018年7月に会社を退社してコミュニティの活動に注力する。その活動の傍ら、個人で本の図解に取り組み、第一作目として「サピエンス全史図解」を公開してTwitterでトップトレンドに入るなど、話題となる。株式会社Gaiaxが主催する読書会イベントのBookedにおいて、『Booked VOL.2「サピエンス全史」』、『Booked VOL.4「ホモ・デウス」』などに登壇。また、企業の資料作成のコンサルティングなども行う。

ビジネス図解研究所:沖山 誠(きょん)

この記事の連載はこちら

連載の記事