混雑した店舗でも最高レベルの精度を実現。レジ無し店舗を実現するAIシステムのパイオニア「Zippin」とは

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混雑した店舗でも最高レベルの精度を実現。レジ無し店舗を実現するAIシステムのパイオニア「Zippin」とは

Text : おぐら まみ / Editor : 吹原紗矢佳

2019年1月13日からの3日間、ニューヨークにて全米小売協会(NRF)主催の展示会「NRF 2019 Retail’s Big Show」が開催された。今回は、昨年よりAI技術を取り入れた展示が多く、小売店での新しい購入体験への注目の高さを改めて感じさせる内容となった。

レジ無し店舗を実現するシステムもその一つだ。本メディアでも紹介してきたStandard CognitionAiFiなどが出展している。今回は同様のシステムを開発したパイオニアであるサンフランシスコのスタートアップ企業Zippinについて、その特徴や他社との比較を交えて紹介する。

https://apparel-web.com/pickup/114681 より

Amazon Go最初の対抗馬

Zippinは2018年8月にサンフランシスコでデモ店舗による実証実験を開始した。これはAmazon Goに続く、レジ無し店舗を実現した2例目である。この時点で、同社はベンチャーキャピタルから300万ドルのシード投資を確保している。

専用アプリをダウンロードして入店時にスキャン、好きな商品を手に取り(あるいは戻し)レジを通さず退店できるという流れは、Amazon Goおよび他の競合スタートアップ企業と同様だ。

レジ無し店舗の実現は人件費の削減だけでなく、リアルタイムでの在庫管理や、優れた顧客体験による売上げ増加が期待できる。顧客データの活用がEコマースだけでなく実店舗でも可能となるのだ。

Zippinは、システムの提供に対して売り場面積と販売量に比例した月額料金を支払うビジネスモデル。使用するカメラやセンサーは汎用品が使用可能で、初期投資は半年から1年で回収できる見込みだ。

競合スタートアップとの違い

日本進出を果たしたStandard Cognitionとの違いは、シェルフセンサーの有無だ。Standard Cognitionがオーバーヘッドカメラのみでトラッキングするのに対し、Zippinでは既存の商品棚に設置できるスマートシェルフセンサーによって、オーバーヘッドカメラからの情報を“裏付け”する。

レジ無し店舗システムへの参入企業が増えている一方で、同時に買い物できる客の人数が制限されることは課題の一つだ。Zippinの創業者Krishna Motukuri氏は「カメラとセンサーと組み合わせることで、混雑時にもより高い認識制度を実現する」と語っている

https://www.adweek.com/digital/san-francisco-has-a-new-cashierless-store-and-it-isnt-amazon-go/

Zippinと同様にカメラとセンサーを使って無人決済を可能にするAiFiとの違いは、顔認証の有無だ。Zippinが顔認証をしないのに対し、Aifiは顔認証や動きの解析で顧客の識別や万引きなど不審な動きの感知している。

また、AiFiは自動販売機以上コンビニエンスストア以下の商圏にある、空白の市場に注目している。NRF 2019 Retail’s Big Showでは、4.5坪のレジ無しコンテナ店舗を披露し、ポーランドのコンビニエンスチェーンと提携する計画を発表した。

AiFiが商圏を絞っているのに対し、Zippinはすべての店舗が顧客にキャッシュレスサービスを提供することを目指している。店内の混雑にも対応できるスマートシェルフセンサーは、Zippinのシステムをインストール済みの冷蔵什器に内蔵することで、オフィスビルでのミニマムな無人コンビニも実現できる。

市場の期待と課題

イギリスの英市場調査会社「Juniper Research」によると、レジ無し店舗での決済規模は2022年までに8兆円を超えると予想されている。Zippinはスーパーやコンビニエンスストアだけでなく、将来的にガソリンスタンド併設の小売店や空港などにもシステムが導入されるという考えだ。

ただし現時点で、Zippinは衣料品のように柔らかく重量の軽い衣料品は、システムで認識しづらく対応できない。また他のシステムでも同様だが、重量制や年齢確認の必要な商品をいかに無人で対応できるようにするかという課題はまだ残されている。

国内でも期待の高まるレジ無し店舗

博報堂生活総合研究所は、“生活者が選ぶ“2019年ヒット予想”で「レジ無し店舗」が9位となった。8位には「QRコード決済」がランクインし、小売店でのストレスフリーな購入体験が期待されている。

このほか「無人店舗」や「スマホ事前注文」といったキーワードも30位以内に入り、国内の生活者レベルまでスマートショッピングへの期待が普及してきたと考えられる。

ZippinはNRF 2019 Retail’s Big Showの時点で提携する小売りチェーンの存在を明らかにしてはいないが、複数の大手企業と商談中だ。Amazon Goに対抗したパイオニアが、競合スタートアップともしのぎを削りながら今後どう展開していくのか期待したい。