「クリエイティブAI」と挑む、おもてなしの可能性。自動生成アイドルから、未来のバーチャルクルーは生まれるか

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「クリエイティブAI」と挑む、おもてなしの可能性。自動生成アイドルから、未来のバーチャルクルーは生まれるか

Text : 江原ニーナ / Editor : 佐々木将史

クリエイターの仕事をAIに委ねる技術、いわゆる「クリエイティブAI」の開発を進める、京都のスタートアップ企業・株式会社データグリッド。2018年6月に同社は、AIがアイドルの顔を無限に生成する「アイドル自動生成AI」を発表した。

予測や認識、最適化などの分野においては人工知能が活用され始めているが、クリエイティブ領域での利用も、いよいよ現実味を帯びている。

本記事では、そうした技術が実用化した先で、小売業界にどのような変化がもたらされるのかを探っていきたい。

自動生成の鍵となる技術「GAN」とは

データグリッドは、2017年に京都大学ベンチャーインキュベーションセンター(KUViC)で創業し、絵画やデザイン、音楽などを生成するクリエイティブAIの研究開発を行なっている。AI関連システムの開発、コンサルティングも担っており、過去には、ITコンテンツ事業を手がける株式会社アエリアと共同で、AIによるキャラクター画像自動生成の研究開発を行なった。

データグリッド公式サイトより

同社の基幹技術は「GAN(Generative Adversarial Network/敵対的生成ネットワーク)」と呼ばれるAIのアルゴリズムで、「教師なし学習モデル」という機械学習の一種だ。

従来のAIの学習方法は、コンピュータに質問と正解を与える「教師あり学習モデル」が主流だった。コンピュータが正解を分析し、質問とリンクさせて判定精度を向上させるもので、数値予測や分類領域のAIによく用いられる。

一方で、GANは正解がない中で新たなデータを生成させるモデルだ。AIが学習データから構造や法則を導き出して画像などを「生成」し、別のAIに生成物が本物かを判定させる(これを「敵対」という)。偽物だと判定された場合、失敗の原因を分析し、生成し直すことで正確性を向上させていく。このプロセスを繰り返すことで、“実在しそうな”データの生成ができるのだ。

「アイドル自動生成AI」もGANを活用したものだ。数万枚のアイドルの顔写真から、ディープラーニングで特徴を学習したAIが、実在しない顔を生成する。現在、作れるのは首から上の高解像度(1,024×1,024px)の画像で、バリエーションは無限だという。

データグリッド社は今後、「顔」だけでなく架空のアイドルの「全身」をAIで生成して、動かすことまで想定しているそうだ。さらに、将来的にはユーザーの好みを認識し、生成を可能とするAIにまで開発を進展させたいとしている。

話しかけたくなるバーチャルクルー

GANの精度の向上により、自由に画像が生成でき、静止画のみならず動作まで表現できるようになれば、小売業界への応用も拡大する可能性がある。

ITやエレクトロニクス分野における、最先端技術や製品を発表する国際展示会「CEATEC JAPAN 2018」では、株式会社SHOWROOMと共同開発を行う株式会社ローソンがバーチャルクルーのデモを展示し、実店舗の「おもてなし」を進化させた未来のコンビニエンスストアを提案した。

同展示にて登場したバーチャルクルー「みくる」は、食品類の購買記録から栄養バランスをチェック。「トマトのサラダを追加したほうがいいですよ」という提案や、ウェアラブルデバイスのバイタルデータから健康へのアドバイスをしたそうだ。

EE Times Japan」より、ローソンのバーチャルクルー「みくる」

このバーチャルクルーには、アニメのような見た目を採用していたが、ここにクリエイティブAIを活用して生成した、リアルな「人型」のバーチャルクルーを起用できれば、実店舗における新たな接客の可能性にも期待できる。

他にも、ドライブスルーの注文窓口や、オフィスで担当者を呼ぶための受付に、バーチャルクルーを設置するといった活用法も考えられそうだ。

人とAIが共創する社会へ

こうした自動化や機械化の浸透には、ためらわず話しかけることができ、思わず使ってみたくなるようなUI(ユーザー・インタフェース)であることが鍵となるかもしれない。

例えば、株式会社LINEが販売するスマートスピーカー「LINE Clova Friendsシリーズ」は、そのキュートなUIが特徴の一つだ。従来のデバイスは、通常のスピーカーに音声認識AIが搭載されたものだが、キャラクターUIの採用によって「思わず話しかけたくなる」製品となっている。

次世代型の対人システムや実店舗が、セルフ化無人化に向かう流れは、少子高齢化が加速する中での労働力不足に対応したり、人為的なミスを防止したりする上では大きなメリットだろう。しかし、「新しいUI」という物珍しさだけでは、一時的な流行として終わってしまうかもしれない。

バーチャルクルーなどのUIで重要なのは、顧客とのコミュニケーションや、顧客体験の向上に活用できるという点だ。この認識が広まれば、新しいテクノロジーが小売業界で本格的に浸透する可能性はある。

データグリッドが目指すのも、単にクリエイティブAIが人間の仕事を代替する未来ではない。同社が描くのは、AIがクリエイターの想像を刺激して、新たな創造に貢献する社会だ。それは「人との共創」を探るものであり、この先の私たちが技術を導入する際に、常に意識すべき視点ではないだろうか。