“完全キャッシュレス”の上島珈琲店・大手町フィナンシャルシティ店をレポート。アプリ「O:der」は店舗に新たな余白を生み出す

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“完全キャッシュレス”の上島珈琲店・大手町フィナンシャルシティ店をレポート。アプリ「O:der」は店舗に新たな余白を生み出す

Text : 江原ニーナ / Editor : 佐々木将史

2019年2月1日より、「大人のための珈琲店」をコンセプトに掲げる上島珈琲店(UCCグループ)が、「大手町フィナンシャルシティ店」での完全キャッシュレス化に踏み切った。ビジネス街にある同店舗は、上島珈琲店の中でもキャッシュレス決済の比率が高いことから、新たな挑戦の場として白羽の矢が立った。

完全なキャッシュレスへ移行する飲食店は未だ多くない中で、上島珈琲店の取り組みは新たな風を起こすのか。本記事では、オープンしたばかりの店舗へ実際に足を運び、体験したサービスをレポートする。

スマートなのは訪店前から。アプリで注文から決済まで完結

現金の使えない同店舗での決済手段は、大きく分けて5種類ある。UCCグループが発行するプリペイド式カード、クレジットカード、電子マネー、QRコード決済(PayPay、Alipay、WeChatPay)、そしてスマートフォンアプリ「O:der(オーダー)」だ。

公式アプリ(「Apple Store」より)

O:derは、株式会社Showcase Gigが提供する事前注文と決済のサービスだ。この完全キャッシュレス化に伴って導入され、顧客の利便性の向上や、店舗オペレーション効率化が図れるという。今回、筆者もこのO:derを利用して、店舗を訪れる前に注文を行った。

O:derでは、まず位置情報を元にサジェストされる登録店舗から、注文したい店を選ぶ。次に、メニューから注文したい商品を選択。受け取り時間を決めたら、確認画面に進み、注文を確定する。

決済もアプリ内で行われる。初回の注文時には、使用するクレジットカードの登録が必要だが、一度登録すれば次回からそのまま注文できるため、さらにスムーズになるだろう。

注文前後の画面

注意点は、店舗の開店時間と、モバイル注文の対応時間が異なることである。店舗は「7〜21時」を営業時間としているが、O:derからのモバイル注文が可能な時間帯は「10〜18時」と限られていた(2月21日時点)。

筆者は18時過ぎに同店へ移動中、O:derの時間外で注文できず、一度出直した。公式リリースやアプリにはこの情報の記載がないため、O:derを利用したい方は、対応時間に注意が必要だ。

商品が準備できるとスマホに通知。店頭でストレスのないやりとりを実現

上島珈琲店・大手町フィナンシャルシティ店があるのは、「大手町フィナンシャルシティ・ノースタワー」の1階だ。東京メトロ各線「大手町」駅のA1出口から、歩いて3分ほどの場所にある。

実際に店舗へ足を運んだ14時ごろは、レジ前に数人並んでいる程度で混み合う様子ではなかった。

店内のレジ付近の様子。一見、他店舗と大きな違いはない

レジには、一般的なカフェにあるようなキャッシャーはなく、あるのはタブレット一台。顧客と店員の間には現金のやりとりがないため、オペレーションはスムーズなようだ。

O:derで事前注文した顧客は、商品の準備ができたことを知らせる通知が来たら、店舗でアプリのオーダー画面を見せて、商品を受け取ることができる。筆者が訪れた際は、区別するレーンは用意されておらず、店頭注文の来店客と同じように列へ並んだ。

受け取り前の画面

サンドイッチとミルクティーを注文。どちらも受け取り時間に合わせて準備されていたため、出来立ての温かい状態で受け取れた。

店頭で受け取った商品。“WE’RE CASHLESS”の文字が店内のあちこちに並ぶ

ポイントカードもアプリで管理

注文と支払い以外にも、O:derで便利になったものがある。これまで、それぞれの店舗ごとだったポイントカードだ。アプリ内に機能として内蔵されており、あらかじめ設定された還元率などに応じて、自動的にポイントが追加される。

実際、商品を受け取って数分後には、支払いの完了とともに、スタンプが押されたことを伝える通知が来た。

アプリ内のスタンプカード。来店や注文に応じて自動でスタンプが押される

後ろに人が並んでいると、レジの前で気が引けて、ついついカード探しを諦めてしまうような場合もあるだろう。また、従来のような「カードを持っているか」「新しく作るか」などのやりとりは不要になる。

支払いも含めた完了通知も、ユーザーとしては安心感があった。アプリによる自動化で店舗側は顧客対応の工数を削減でき、顧客側も余計な心配をせずに済むため、win-winな状態を作り出せるようだ。

進むキャッシュレス。顧客体験向上のための「余白」をつくれるか

昨今、飲食店での完全キャッシュレス化の取り組みが世界中で広まっている。DooRでも過去に取り上げた、中国発コーヒースタートアップLuckin Coffeeも、完全キャッシュレス、アプリ内注文に特化している。同社はこの戦略により、待ち時間や現金のやりとりなどのストレスをなくし、併せてデリバリーサービスを展開させ、中国ミレニアム世代の心を掴んだ。創業から10ヶ月で1,000店舗を達成したという。

海外だけではない。2019年2月12日、秋葉原にも完全キャッシュレス、レジレス、ウォークスルーの3つの特徴を持つカフェ「Developers.IO CAFE」が実験的にオープンするなど、国内でもこうした動きは広がっているようだ。

今回、完全キャッシュレスを導入した上島珈琲店で感じたのは、「無駄」の無さだ。待ち時間、現金のやりとり、定型的な会話などが取り除かれることで、時間的にも精神的にも余裕が生まれているように思えた。

テクノロジーが発展する副作用として、人と人との関わりが少なくなることを懸念する声もある。だが、実際にはテクノロジーはそれを奪ってはいない。むしろ、「注文した商品と食べ合わせのよいものを提案する」といった新たな関わりを生み出せることもあるだろう。

同店舗のような取り組みの先にこそ、より顧客に寄り添うための「余白」が生まれるのかもしれない。