“楽天経済圏”が模索するオフラインのデータ取得。レシート連動の広告サービス『Rakuten Pasha』を解説

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“楽天経済圏”が模索するオフラインのデータ取得。レシート連動の広告サービス『Rakuten Pasha』を解説

Text : АIЯI / Editor : 佐々木将史

2019年2月より、楽天株式会社が新たな広告サービス「Rakuten Pasha」の運営を開始した。クーポンの発行と顧客の「レシート撮影」を通じて、企業が実店舗で販売する商品のプロモーションを実施できるものだ。

Rakuten Pashaの特徴は、購買を行ったユーザーの「楽天ID」に基づいたデータを分析できる点にある。「楽天市場」など70以上のサービスを展開し、合わせて12億以上のユーザー数を抱える『楽天エコシステム(経済圏)』で提供されているからこそ、より高い精度のマーケティングに繋がる。

ここでは、企業がRakuten Pashaを導入するメリットや、楽天の狙いを紹介していく。

対象商品購入レシートの送信で、顧客に「楽天スーパーポイント」を付与

Rakuten Pashaでは、スマートフォンサイトを通じて、メーカー企業などが実店舗での販促を行うことができる。

同サービスを利用する企業はまず、実店舗での商品購入を検討しているユーザーに対し、商品名と対象期間を記載した日替わりクーポン「トクダネ」を提供。


スマートフォンサイトより(PCでは閲覧不可)

ユーザーはこの「トクダネ」を取得後、全国のコンビニやドラッグストアで該当商品を購入。その商品情報が印字されたレシート画像を送付することで、「楽天スーパーポイント」が得られるという仕組みだ。

企業は商品情報やプロモーションの予算額、クーポンの発行期間、ユーザーが実際に商品を購入した際の1商品あたりのポイント付与額を設定する。売上に連動した費用負担だけで、手軽に導入することができる。

2019年3月からは、「プチアンケート」機能も実装されている。Rakuten Pashaを利用する企業はユーザーに対し、購買動機や商品認知などの複数回答形式の質問を、1商品につき3問まで設定可能だ。

ユーザーには、アンケートの1回答につき1ポイント「楽天スーパーポイント」が付与される。ポイント還元という分かりやすいメリットがあるため、メールアンケートなどに比べても、積極的に回答を得られそうだ。

企業がRakuten Pashaを導入するメリット

Rakuten Pashaは、楽天スーパーポイントを利用できる「加盟店」に限らず、あらゆる店舗で自社商品のプロモーションを実施できる。(クーポンを使用できる店舗を、企業が限定することは可能。)

楽天によれば、メーカーにとって実店舗でのマーケティングには、セグメントを絞った施策の導入や購買ユーザーの属性理解などに課題があったという。その背景に、物理的な制約や実施までのリードタイムの問題などを同社は挙げる。

Rakuten Pashaならば、大きなコストをかけることなく、クーポン形式の広告配信から効果検証まで一括して行うことが可能だ。新商品の販売開始や定番商品の再購入を促進したい場合など、状況に合わせた販促マーケティング施策を短期間で実行できる。

購買ユーザーの属性調査を独自で行うには、時間もコストもかかる。マーケティングに欠かせないこのデータを迅速に集めることができれば、より高い精度で次回以降の施策の見直しに繋げられるのだ。

楽天会員数は、2018年9月末時点で1億人以上。そのうちの69.2%は、楽天グループのサービスを2つ以上利用しているという

Rakuten Pashaなら、これらのユーザーIDに基づいた属性や購買データなど、独自のビッグデータから分析を行うことができる。オンラインの場から店舗などのオフラインの場へ消費者を誘導する「O2O(Online to Offline)」のマーケティングを、データに紐づけて効率的に導入できる点は、データ活用を苦手とする企業にもメリットといえるだろう。

“楽天経済圏”に加わるオフライン行動データ

楽天加盟店だけでなく、全国のあらゆる店舗での購買を対象にするRakuten Pachaは、マーケティングやプロモーションに活用できる、企業にとって導入しやすいサービスだ。

これは楽天と提携している企業だけでなく、楽天自体のエコシステムの拡大と強化にも繋がると考えられる。

この楽天エコシステム(経済圏)は、世界で70以上のサービスと、合計12億以上のユーザーで成り立つ。2018年12月時点で、国内EC流通総額は3.4兆円、全体のグローバル流通総額は15.4兆円だ。

楽天はグループサービスの複数利用を共通IDで可能にし、ユーザーの回遊的なサービス活用を促進している。しかし、ECや金融などオンラインを主軸にしたサービスでは、実店舗での販売におけるオフラインのデータ取り、その属性を見極めることが難しかった。

だが、Rakuten Pashaのようなサービスが加わることで、楽天会員の「オンライン行動」だけではなく、「オフライン行動」のデータ取得にも可能性を見出すことができるだろう。

楽天副社長執行役員CROの有馬誠氏は「購買データに基づかない全てのマーケティングは無駄である」と述べているが、楽天エコシステムはまさに購買データの宝庫だ。この豊富な属性データと店舗での行動をいかに紐づけるか。

Rakuten Pashaは始まったばかりの小さなサービスだが、オフライン行動に紐づけたデータ活用の一手となりえる。楽天の膨大な顧客情報を利用して、顧客にとって価値ある商品やサービスに結びつけてほしい。

(トップ画像:「Rakuten Pacha」公式サイトより)

ファスト系メガネ屋での販売員として働いたのち、名古屋の某WEB会社に内勤ライターとして入社。現在は、名古屋の某企業グループ会社(ネット回線)/IDENTITY(IDENTITY名古屋・DooR)/名古屋の某WEB会社(金融系)など、フリーランスのライターとして従事。以前より雑貨屋・アクセサリー作家/大学生(建築系)/Web小説家/占い師としても活動しており、執筆領域は金融・テクノロジー・小売・ライフスタイルなど多岐に渡る。

АIЯI

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