入場者の属性から、“ワクワク”の表情まで読み取る!名古屋グランパス戦での顔認証AI「顔パス®」実証実験レポート

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入場者の属性から、“ワクワク”の表情まで読み取る!名古屋グランパス戦での顔認証AI「顔パス®」実証実験レポート

Text : fukiharasayaka / Editor : 佐々木将史

人体の身体的特徴を解析して個人を識別する「生体認証」。指紋、掌紋、静脈、虹彩、DNAなど、さまざまな種類が登場している。DooRでもこれまで、顔認証音声認識について紹介してきたが、株式会社テクムズの顔認証AI「顔パス®」は、表情までも読み取れるという。

2019年4月、その顔パス®の実証実験が、Jリーグクラブの名古屋グランパスエイト協力のもと、「豊田スタジアム」(愛知県豊田市)で行われた。これまでに「パロマ瑞穂スタジアム」(愛知県名古屋市瑞穂区)でも2回の実証実験が行われており、今回が3回目。

この実験では、顔パス®により、入場者数のほか年齢や性別など入場者の属性データ、さらに表情のデータも取得した。本記事では、その様子をレポートする。

混み合う入場ゲートで、属性データをすばやく取得

コンサート会場などでこれまで用いられてきた顔認証AIでは、一人ひとりがカメラの前に立ち、個人を認識するものが多かった。今回、名古屋グランパスエイトが導入した顔パス®ではその必要がなく、入場者が普段通りの荷物チェックを受けたり、チケットのチェックインをしたりしている間に、精度の高い属性データを取得できる。

得られる入場者データは、「年齢」「性別」「人種(アフリカン、インディアン、アジアン、コーカジアンの4種)」「表情」。年齢に関しては、実年齢のプラスマイナス3歳で推定している。実証実験を重ねてパフォーマンスのチューニングを行うことで、データの精度も上がってきているという。

顔パス®は、ある程度のスペックを満たしたカメラであれば、大きさや形を問わず、量販店などで市販されているものでも使用できる。最近では大掛かりな工事の要らないコンパクトなカメラも多いため、後付けで手軽に導入できる上、コストも抑えられる。

今回の実験では、特定の入場ゲートに2種類のカメラが1台ずつ設置されていた。

また、カメラ以外でスタジアムに持ち込まれていた機材は、PC2台と小型サーバー、エッジデバイス(複数のネットワーク通信の仲介機器)のみ。

PCは確認用であり、データの取得自体に必要はない。エッジデバイスには、データを処理するコンピュータ機能が集約されており、今後はそれ自体で分析までできる技術も進んでいくという。そうなれば、顔パス®はカメラとエッジデバイスのみで運用できるようになるだろう。

顔認証に“プラスアルファ”のサービスを提供

「リアルの場」における顧客調査といえば、従来はヒアリングやアンケートなど、人手も費用もかかるものであった。豊田スタジアムのような数万人規模の入場者でそれを実施するには、多大なコストがかかる。結果を得るにも、かなりの時間を要したはずだ。

しかし、顔パス®を使用すれば、安価に、しかもリアルタイムにデータの分析ができる。時間帯ごとに性別および年齢別の入場者数が分かるだけでなく、表情データの取得から顧客満足度も推計できるため、それらに合わせたマーケティングを即座に展開できるのだ。

▲データ分析画面(イメージ)

ただし現在はまだ、同サービスを提供するテクムズから、検証の結果として事後レポートが出されている段階。今後実証実験を重ねていくことで、提供データの質をさらに上げていくという。

性能が上がれば、スーパーやスポーツジム、テーマパークなど様々な場所での活用も期待できる。設置の容易さを考えると、単発のイベントにも適しているだろう。

テクムズは、2020年1月まで名古屋グランパスエイトとパートナー契約を締結しており、「顔パス®で入場の円滑化やセキュリティの向上、来場者の笑顔を作る快適なスタジアムの環境づくりに貢献する」としている。

顔パス®は、導入する企業によってさまざまな使い方が可能だ。小売店舗なら、「どんな属性の人がどんな商品に興味を持つか」といったマーケティングデータの収集から、個人の決済情報を紐づけることで実店舗の省人化・無人レジ化にも活用が可能だ。また、ホテルのレセプションなどでは、利用履歴を顔認証によって引き出して、最適なサービスの提供もできる。

今後、顔パス®️が新たなパートナーと手を組むことで、これまでにない展開も見えてくるかもしれない。リアルの場が持つ可能性の、広がりを感じずにはいられない実証実験だった。