世界が注目する“人間レベル”の認識力。中国AI企業、Malong Technologiesが小売にもたらす価値とは?

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世界が注目する“人間レベル”の認識力。中国AI企業、Malong Technologiesが小売にもたらす価値とは?

Text : なかがわ あすか / Editor : 佐々木将史

無人店舗やスマホ決済など、小売分野におけるテクノロジー革新が進む中国。その波を牽引するAlibaba Group(阿里巴巴集団/アリババ・グループ)の名は、日本のメディアでも目にする機会が増えた。

そんなAlibabaの背中を驚くべきスピードで追いかけ、認知度を高めている企業が存在する。中国・深圳(シンセン)に本拠地を置く、Malong Technologies(マロン・テクノロジーズ)だ。同社は、AIを活用した画像認識の技術で注目を集めている。

開発しているAIプラットフォーム「Product AI(プロダクト・エーアイ)」は、近い将来、世界中の小売業界で重宝されると宣言している。何を可能にするプロダクトなのか。実例を踏まえながら、その詳細を追う。

世界トップレベルの画像認識力

Malong Technologies(以下、Malong)の創業者である、黄鼎龍(Huang Dinglong)氏とMatthew Scott氏は、ともにMicrosoft社の出身。CEOの黄氏は、GoogleやTencent(騰訊/テンセント)でのキャリア経験もあり、Trip Adviser Chinaの副社長も務めていたという。

後援企業には、Amazonを始め、半導体メーカーのNVIDIA、ECのeBayなど、錚々たるグローバル企業が名を連ねている。2017年11月には、日本からもソフトバンクが2億2,000万元(約37億4,000万円)を投資したことが報じられた。国内だけに留まらず、海外からも大きな期待が寄せられている証拠だろう。

Malong社が、これほどまでに注目されている理由は、AIを活用した画像認識の技術が突出している点にある。

同社は、2017年7月にハワイ・ホノルルで初開催した、AIによる画像認識の精度を競うコンテスト「Web Vision(ウェブ・ビション)」に参加。正確率94.78%を叩きだし、およそ100社の強豪を抑え優勝を飾った。

一説によれば、人間の目による画像認識の精度は約94%だという。Malong社が有する技術は、その精度が人間の視覚認識と同等のレベルまで到達している。

「Product AI」が小売業界にもたらす恩恵

Malong Technologies 公式サイトより

Malong社が提供するProduct AIは、先に説明した画像認識AIを実際に活用できるプラットフォームだ。

同製品を使えば、写真や画像に写っている物の判別ができる。肉眼では見えないほどの繊維分類や、不可視(X線)レベルでの手荷物分類も可能になるそうだ。

以下、2つのシーンを挙げて、その活用例を見ていこう。

<実店舗・ECでの活用例>

小売店舗がProduct AIを導入すれば、顧客が手に取った商品や、棚に戻した商品の判別をシステムが自動で行う。レジで商品のバーコードを読み取らずとも、購買内容を把握し、顧客に請求することが可能だ。電子決済と連動すれば、よりスムーズな購買体験を提供できるだろう。

顧客はレジの前に長時間並ぶ必要がなくなり、店員もレジ打ちに時間を取られることはない。回転率の向上にもつながるはずだ。

Malong Technologies 公式サイトより

公式サイトでは言及されていないが、「どのような顧客(性別や年齢)が、どの商品を手に取り、そのうち何名が棚に戻し、あるいは購入をしたのか」をデータとして記録することも(おそらく将来的には)可能だろう。購買行動の詳細な情報があれば、各店舗で最適なマーケティング施策を考えられるようになる。

さらに個人がこの認識技術を利用できるようになれば、ECとの連携にも可能性が広がる。SNSに投稿された著名人やモデルの私服画像をアップロードすることで、彼女たちが着用する服のブランドサイトとリンクさせることも夢ではない。

<商品開発での活用例>

Malong Technologies 公式サイトより

Product AIを競合分析に利用する方法もある。まず、服飾品やインテリアなどの写真や画像をプラットフォーム上にアップロードする。写っている製品を識別させれば、ブランドの割り出しにはじまり、該当アイテムの配色割合を把握することも可能だ。

ファッションやインテリアのバイヤーなどは、海外へ足を運び、街を歩く人々や人気店にあるインテリアの写真を撮ることで、当地のトレンドをデータとして可視化することもできるだろう。

顧客の満足度を上げるだけでなく、企業にとっては新たな販売経路が増え、売上のアップも見込める。今後の小売業界でProduct AIの活用例は増えていくはずだ。

日本進出を含めた、Malong社の今後の展望

Alibabaが提供するスマホ決済「Alipay(支付宝/アリペイ)」や、無人コンビニ「BINGO BOX(ビンゴ・ボックス)」など、小売業の最先端を行く中国企業が、続々と日本進出への意欲を示している。

国内で無人店舗の普及を後押しする、株式会社テクムズの代表取締役の鈴木孝昌によれば、今後は日本でも無人店舗の数が増えていくことが予想される。Malong社が提供するような画像認識サービスの需要は、必然的に高まるだろう。

同社は日本に支社を構えている。ソフトバンクが巨額の投資を行ったことも踏まえると、Product AIが本格的に日本で展開される日も、そう遠くはない。

フリーライター。1994年生まれ。学生時代に国際交流事業に携わるなかで、スロバキアに興味を持ち、長期留学を決意。その体験記を旅行メディア「REISEN」で執筆し始めたことをきっかけにWEBメディアの魅力を実感。帰国後は名古屋・東京の複数メディアで本格的に執筆を始め、フリーペーパーの営業・編集を経たのち、フリーランスの道へ。執筆領域はグルメ、ビジネス、スポーツ、ライフスタイルなど。

なかがわ あすか

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