Amazon Goだけじゃない!無人店舗の“今”は米スタートアップ「Inokyo」を見ればわかる

column

Amazon Goだけじゃない!無人店舗の“今”は米スタートアップ「Inokyo」を見ればわかる

Text : 結木 千尋 / Editor : 吹原紗矢佳

無人店舗が一般化へ向けて着々と進んでいる。契機となったのは米EC大手Amazonが運営する食料品店、Amazon Goのオープンだ。2018年以後、欧米や東アジアを中心に、次々事例が聞かれるようになった。

本記事では、Amazon Goのインディーズ版ともいわれるアメリカのスタートアップ企業「Inokyo」のケースをもとに、無人店舗の“今”を紹介する。

Inokyoはあえてレジレスを採用しない

Inokyo公式サイトより(https://www.inokyo.com/

Inokyoは、2018年、無人小売店舗のプロトタイプをカリフォルニア州マウンテンビューのカストロ通りにオープンした。この店舗では、陳列棚から出入りする商品をAIカメラで撮影・把握することで、バーコードスキャンなしの購買体験を可能にしている。決済時にアプリのQRコードをスキャンすれば、自動的に購入代金が引き落とされる仕組みだ。

アメリカではここ最近、無人による決済システムを開発する企業が増えてきている。サンフランシスコを拠点とするスタートアップ、Zippinもそのうちのひとつだ。

Zippinがサンフランシスコ市内にオープンした店舗では、商品を持ち出すだけで自動的に決済が完了する。Amazon Goに続く完全チェックアウトフリーの店舗として注目を集めているという。

このようなチェックアウトフリーのシステムは、“Just Walk Out”システムとも呼ばれる。一度も足を止めることなくショッピングが完結するという特徴を、端的に言い表した呼称だ。
Zippinの店舗がレジレスの“Just Walk Out”システムであるのに対し、Inokyoの店舗は決済時に足を止める必要がある。Inokyoでは、まだレジレスに慣れていない利用客の心理を汲み取り、あえて決済時にスキャンが必要なシステムを構築しているという。

最適なビジネスモデルを模索していく

現在、Inokyoは、品揃えに関する問題をクリアするため、無人店舗の一般化を目指すにあたりデータを収集している。店頭にある商品の在庫が切れたとき、無人店舗では即座に補充できない。そのため、次の補充までにどれだけの商品が売れるのかを正確に把握しておく必要がある。Inokyoは実用化の前段階として、βテスターとなる顧客を募集し、彼らから集めたデータを今後の運用に活かしていくという。

また、今後のビジネスモデルについても模索中だ。Inokyoの共同ファウンダーであるTony Francisは、「このテクノロジーをいち早く進化させたものが市場を席巻できると考えている」と語っている。自社店舗で無人化システムを運用していくのか、サービスとして他の小売店に販売するのか、βテストによって集められたデータから最適なビジネスモデルを検討していくようだ。

無人店舗が抱える課題とInokyoの目指す先

アメリカの大手調査会社Forester Consultingが、“ショッピングにおける満足度を左右するものは何か”という調査を行ったところ、「店舗の場所と商品価格」に次いで、「レジの待ち時間」と「レジスタッフの対応」が上位にランクしたという。約4割の回答者が、レジ待ちの列を見てショッピングを断念した経験を持ち、そのうちの6割にも及ぶ回答者が、次回以降の店舗選びにも影響があったと回答した。ここからわかるのは、顧客獲得におけるレジ体験の重要性だ。

店舗がレジで顧客を失うことは、大きな機会損失だと言えるだろう。現代はECが全盛と言われる時代だ。先の調査からもわかるとおり、無人化によって顧客はレジにおけるネガティブな体験を減らせる。店舗・顧客の両者にとって、この取り組みはポジティブに働くはずだ。

一方で、レジ無人化は店舗の無人化とイコールではない。現状のシステムではコスト削減の観点から無人での運用をしており、防犯面は顧客に対する信用で成り立っている。実用化にあたり、この点を課題とする声は大きい。Inokyoは、今後防犯のために店舗にスタッフを置く可能性があることを明言している。店内を見回るスタッフを置くことで防犯面の課題を解決する狙いがあるのだろう。

同じく無人システムを開発するアメリカ・AiFi社の技術では、AIカメラによって不審な動きを検出できるという。常駐スタッフによるシステムの目視が加われば、課題解決に大きく近づくかもしれない。

また、人間にしかできない役割もある。先に述べたシステムの目視はその一例だ。顧客のニーズに合う商品をおすすめするコンシェルジュとしてスタッフを置くプランもあると、Inokyoは語っている。

テクノロジーだけが独り歩きする先に小売の未来はない

無人店舗の話題では新しいテクノロジーに目を奪われやすい。しかし、本来フォーカスされるべきは業務の効率化と顧客体験の最適化だ。その意味で、Inokyoの取り組みは本質を見失っていないと言える。
レジ作業から完全に解放された店舗スタッフがAIにはできない業務に従事することで、顧客満足が最大化される。テクノロジー×小売が描く未来は、そのような姿なのかもしれない。