顔認証から顔認識とは?スマホから店舗まで、最先端の事例で紹介

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顔認証から顔認識とは?スマホから店舗まで、最先端の事例で紹介

Text : 結木 千尋 / Editor : 佐々木将史

iPhoneやAndroidのログオン認証にも採用されている「顔認証」の技術。テクノロジーの進歩によって、顔の検出や照合の精度が向上し、より応用の幅が広がった形だ。従来は写真など静的なもので顔認識をしていたが、近年は動画やライブカメラを用いた動的な認証の実用化が進んでいる。

顔認証とはいったいどのような仕組みなのか。この記事では、小売の分野にも波及する顔認証について、実例を含め、解説する。

顔認証・顔認識の仕組みとメリット

「顔認証」とは、写真やカメラを用いた画像で個人を特定する認証方法だ。「顔認識」ともいう。目・鼻・耳・口といったパーツの形やバランスが主な判断材料である。

顔認証の処理には、大きく2つのステップがある。「顔検出」と「顔照合」だ。

「顔検出」は、顔を探す処理のことである。カメラによって撮影された画像から顔領域を特定し、さらに顔の特徴点情報(目・鼻・口端など)を捉える。これにより、顔領域の位置や大きさをデータ化するのだ。

次に行う「顔照合」処理は、あらかじめ用意されている顔データと、「顔検出」で取得した画像データを照合し、同一人物である判定や、属性の特定を行う。

AIカメラによる顔認証を活用した技術例(Ciao Camera

顔認証技術の研究は歴史が古く、1960年代に始まったと言われている。当時からするとカメラやコンピューターの性能が飛躍的に向上したことで、顔認証技術の精度も大きく進歩している。光の当たり方や眼鏡の有無、髪型の変化、顔の模倣など、不安視されがちな事案にも対応できるようになってきた。

顔認証にはいくつかのメリットがあると言われている。まず、指紋認証やパスワード認証と比較して、ユーザーに操作を強いる必要がない。また、人が個人を判別する認証方法に近いため、ユーザーの心理的負担が少ないこともメリットに挙がる。スマートフォンやオフィスのオートロックのように日常的に使う認証であればあるほど、自然なプロセスでストレスを感じさせないことが重要だが、この点は意外にも見過ごされやすい。

さらに、不正に対しても抑止効果が期待される。照合時の画像データをログとして残せば、人間の目視による画像確認も可能だ。二重チェックできる構造は、実際に人間が確認するかどうかに関わらず、不正する側に可能性を案じさせる点で、監視カメラ以上の抑止力を期待できるだろう。

顔認証技術の実例たち

最近では私たちの生活のすぐそばでも実例を耳にするようになってきた顔認証技術。この項では実例を紹介していこう。

NEC「生体認証 ~Bio-IDiom~」公式サイトより

iPhone X・Androidのログオン認証

真っ先に想像しやすい実例はスマートフォンだ。特にiOSの顔認証技術“Face ID”については、日常的に使っている方も多いのではないだろうか。

これまでスマートフォンのセキュリティでは、数字やアルファベットの文字列を用いたパスワード認証や、あらかじめ登録した指紋と照合する指紋認証が一般的だった。現在はiPhone Xを始めとした機種に、顔認証技術を用いたログオン機能が搭載されつつある。

Apple「iPhoneXS」公式サイトより

Appleが“Face ID”と呼ぶ顔認証では、スマートフォンのロック解除のほか、iTunes StoreやApp Storeでのアプリ購入、Apple Payでの支払いも完結できる。認証の精度が低ければ悪用される可能性があるなかで、金銭に直結する認証にも活用されていることには、現代の顔認証技術の正確さがうかがえる。

コンサートでの本人確認

チケット販売の分野でも、顔認証技術が活用されつつある。チケット購入時に購入者が自身の写真を提出し、その写真をもとに入場時に本人確認する仕組みだ。

特にコンサートチケットは、定価の何十倍といった価格で不正に転売されることも少なくない。そのため、2016年の嵐のコンサートなど、身分証明書をもとに人間が目視で本人確認を行うケースもあった。だが、目視による確認では精度に限界があり、労力もかかる。この状況を打破するために、顔認証技術にかかる期待は大きかった。

実際に最近では、宇多田ヒカルのライブ「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018」で導入された事例がある。観客の入場にあたり、大規模な会場では開場から開演まで2時間の余裕を持っておくことが一般的だが、1時間で滞りなく入場が完了したという。

やむを得ない理由によってチケットを譲渡する場合も懸案事項だが、今後も顔認証が本人確認に採用されていくひとつのモデルケースとなるだろう。

OpenCVを利用すれば、誰でも開発が可能

こうした顔認証の技術は、実は誰でも開発できるようになってきている。それが「OpenCV」という、インテルが開発したオープンソースのコンピュータビジョン向けライブラリだ。このソフトウェアを用いれば、個人でも顔認証技術をシミュレートできる。

100%に近い正答率を得るためにはアルゴリズムなどに工夫が必要だが、物体やパターンから動作の認識まで、高度な画像処理機能を容易に利用できる。これからますます、身近なところでの活用事例は増えていくかもしれない。

顔認証技術を用いたセブンイレブンの新店舗

小売の分野にも顔認証技術による変革の波は訪れている。

2018年12月、コンビニエンスストア大手の株式会社セブン‐イレブン・ジャパン(以下、セブンイレブン)が初の省人型店舗「三田国際ビル20F店」をオープンした。これは、日本電気株式会社(以下、NEC)のAI・IoT技術を活用し、来店客の顔を認証できるシステムを店舗に取り入れたものだ。

今回の店舗では、入り口の自動ドアを開閉する「ウォークスルー顔認証」が採用された。設置端末で顔登録を一度行えば、以降は顔認証によって自動でドアが開く。店舗側は、防犯面に顔認証技術が活かせることになる。

さらに、セルフレジによる決済にも顔認証技術が活用されている。同店はNECの社員が対象だが、社員証による支払いと、顔認証による支払いが選択できる仕組みだ。今後は電子マネーとの連動など、よりスムーズに決済ができるシステムにしていくという。

小売業界では近年、マイクロマーケットをターゲットにした戦略が展開されつつある。マイクロマーケットとは、病院や工場、オフィスビルといった小規模な商圏を指す言葉だ。店舗に顔認証技術を採用すれば、このマイクロマーケットの特徴を活かせるという。

従来型の店舗では、「たまたま利用しただけの顧客」の購買情報も傾向の一部となってしまうため、販売データに曖昧さが出てしまう。一方で、マイクロマーケット型の店舗では顧客が限定的であるため、より正確な購買傾向の把握が可能だ。そこに顔情報が加われば、いつ、誰が、どんな商品を購入しやすいのか、まで掴めるという。

店内にあるデジタルサイネージでは、顔情報に基づき利用者の属性(年齢や性別)に応じたおすすめ商品も紹介できる。顧客満足と利益の最大化が、顔情報の自動認識によって可能となる仕組みだ。

顔認証技術発展の先にある未来の購買体験

現在進行形で身近なテクノロジーとなりつつある顔認証技術。それは、スマートフォンのセキュリティのようなパーソナルなシーンだけではなく、公の場で実用化されるところまできている。小売の分野はその一例だ。

一方で世界を見渡すと、画像に映ったモノを認識する技術も進歩が進んでいる。中国では自動で購買内容を把握するAIプラットフォームが開発され、アメリカではAiFi社の実例もある。

「店舗へ行き、欲しい商品をただ持って帰ってくるだけで、自動的に決済まで完了する」

AI技術の進歩にともなって、そのような購買体験も現実のものとなるかもしれない。