デジタルサイネージとは?最新の仕組みや事例から、AI時代の可能性までを探る

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デジタルサイネージとは?最新の仕組みや事例から、AI時代の可能性までを探る

Text : おぐら まみ / Editor : 佐々木将史

駅、商業施設、公共施設……あらゆる場所で「デジタルサイネージ」と呼ばれるディスプレイを目にする機会が増えた。従来ならポスターがかかっていそうな場所である。

広告や案内をデジタルサイネージに切り替えるメリットは、大きく2点ある。まず、紙の掲示で必要だったコストの削減だ。印刷代、梱包発送費用、貼り換えに必要な人件費などが節約できる。また、動的かつ双方向の情報発信は、よりダイナミックな訴求を可能にすると期待される。

では、実際にデジタルサイネージにはどのような仕組みや種類があるのか?価格や効果を考えた場合、レンタルと購入どちらがいいのか?国内の最新事例と共に考えていこう。

デジタルサイネージとは?タッチパネルの小型モデルも登場

一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアムの定義では、デジタルサイネージとは「屋外・店頭・公共空間・交通機関など、あらゆる場所で、ディスプレイなどの電子的な表示機器を使って情報を発信するシステムの総称」とされている。

「電子広告」「電子看板」などとも言われ、大型の広告掲示板がイメージされやすいだろう。しかし、本来はデジタルで繋がった場所に情報を流す、トータルな環境を称する概念だといえる。サイズをとっても、最近では店舗内やタクシーなどで小型機器の導入も進んでいる。

デジタルサイネージ普及の背景

日本では2007年頃に一度、「デジタルサイネージ元年」と呼ばれて市場の期待が高まったことがある。だが、ビジネスにおける成功事例をあまり見せることができず、期待されていたほどの普及はかなわなかった。

しかし、2013年に2020年東京オリンピック・パラリンピック開催が決まったことで、国は「ICT化アクションプラン」を制定。これが要因となり、デジタルサイネージ市場もいよいよ本格的な拡大が見られるようになった。

(株)富士キメラ総研デジタルサイネージ市場総調査2017」によると、2016年の国内デジタルサイネージ市場は前年比10.6%増の1,341億円、今後も毎年25%もの成長が予想されている。

デジタルサイネージの仕組みと種類

デジタルサイネージは、仕組みの違いから大きく3つに分類される。

▪️ スタンドアローン型

USBメモリやSDカードに保存した、決まったコンテンツを表示させるタイプ。イニシャルコストの低さがメリットだが、コンテンツ内容の変更に手間がかかるため台数や更新頻度が少ない場合に向いている。

▪️ ネットワーク配信型

複数のディスプレイをネットワーク接続し、管理用PCによってコンテンツを一括して更新できるタイプ。スタンドアローン型に比べ、機器やCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)など運用管理や保守にコストがかかるが、ディスプレイ数や更新が多い場合に有効。

▪️ インタラクティブ型

ネットワークに接続したものの中でも、特にタッチパネルやセンサーによってコンテンツ内容が変化するタイプ。顧客が直感的に情報へアクセスできる。多国語で表示内容を切り替えることで、インバウンド需要への対応も可能な点から、多くの商業施設などで注目されている。

銀座三越の地下1階化粧品フロアに設置された、タッチパネル式のインタラクティブ型デジタルサイネージ

購入とレンタルによるデジタルサイネージの価格比較

導入に際して、懸念されるのがコスト面だ。手法としては購入、またはレンタルやリースがあり、状況に応じた使い分けも必要となる。

▪️ 購入する場合

43インチのスタンドアローン型で10万円台、同サイズのネットワーク配信型では数十万円ほどの価格帯。長期的な利用が決まっている場合は割安だが、固定資産税などレンタルには無い管理コストがかかることも考慮したい。

▪️ レンタルする場合

1日あたり数千円でのパッケージ価格が相場。イニシャルコストがかからず短期間の利用では割安になり、常に最新の機器が導入できるメリットもある。イベントなど短期間の利用はもちろん、試験的な導入にも利用されている。

特に屋外利用の場合は、高輝度、防水・防塵、温度調整の可能な端末が必要だ。屋内専用に比べて価格が高く、屋外のデジタルサイネージ普及の阻害要因のひとつとなっていたが、最近は廉価な端末も増えている。

デジタルサイネージの日本国内での導入事例

タイムリーな情報発信を省コストで実現した京阪百貨店

京阪百貨店守口店では、週ごとの催事広告をアナログ看板で対応していたが、印刷・設置・回収のコストが課題となっていた。ネットワーク型デジタルサイネージを導入することによって、これらのコストを削減。

株式会社リコー「お客様事例」より

加えて日ごとのコンテンツ更新が可能となり、日替わり出店などの情報も細かく届けられるようになった。

また、料理のシズル感を見せる動画など、従来のアナログ看板ではできなかった表現での訴求により、催事場を活気づかせることに成功している。

新たな購入体験に挑むGU

2018年11月30日、株式会社ジーユーは原宿に「GU STYLE STUDIO」をオープンした。同店は、デジタルサイネージとスマホアプリを活用して顧客が注文する実験的な店舗だ。

店内には、各サイズ、各色が1点ずつのサンプル商品のみが展示されており、在庫は置かれていない。

公式サイトより

顧客は専用のデジタルサイネージ「GU STYLE CREATOR STAND」によってオリジナルアバターを作成し、バーチャル試着を行う。

気に入ったコーディネートは表示されるQRコードを読み取ることで、アプリ「GU STYLE CREATOR」からオンライン購入ができる。店舗とデジタルサイネージとアプリの連携により、リアルとデジタルの融合で新しい顧客体験を目指して話題を呼んだ。

進化するデジタルサイネージ、AIとの連携が進む

さらに、近年のデジタルサイネージは、一方的な広告配信やタッチなど顧客からのアクションを待つだけというだけに留まらない。カメラやセンサーからの情報を得て、AIを用いて解析した上でのコンテンツ配信も可能となってきた。

実際に海外では、Mystore-EのようにAI技術を使ったデジタルサイネージの応用事例が増えている。カメラやセンサーを用いた解析は公共の場だと許可が必要だが、店舗内であれば導入は可能だ(個人情報には配慮されているが、無人店舗などでは事前に許可を得る店舗も多い)。

リアルタイムでディスプレイの前にいる人々の年齢や性別を判断し、時間帯や天候などの要素を組み合わせながら、自動的に最適なコンテンツを配信する「AIデジタルサイネージ」は、今後国内でも普及していくだろう。

シャープの4K対応ディスプレイ。コントローラー内蔵でPC無しでのデジタルサイネージ運用が可能

AI技術の発達に加えて、4K・8K対応や曲面タイプのディスプレイや小型化された周辺機器も登場するなど、ハード面でも進化を続けるデジタルサイネージ。2020年へ向けた経済的な追い風もある。2019年はデジタルサイネージの真価が問われる年となりそうだ。