「完全キャッシュレス&セルフレジ」を実現したクリスプ・サラダワークス。未来型の店舗で、新たな顧客体験の創造へ

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「完全キャッシュレス&セルフレジ」を実現したクリスプ・サラダワークス。未来型の店舗で、新たな顧客体験の創造へ

Text : АIЯI / Editor : 佐々木将史

人材不足が深刻化する飲食業界。この状況を打開する策として注目されているのが「キャッシュレス」である。

サラダ専門店を展開する株式会社クリスプと、飲食店の課題をテクノロジーで解決する株式会社カチリは先月、共同で「クリスプ・サラダワークス広尾店」を完全キャッシュレス店舗としてリニューアルした

すでにキャッシュレス化が進む企業がある中で、この店舗が特筆すべきは「セルフレジ」や「モバイルアプリ」といったテクノロジーを導入し、顧客の注文体験の質を向上させようとしている点である。

クリスプ・サラダワークスが実現した3つのキャッシュレス・オーダー

野菜やドレッシングを自分で選べる、カスタムチョップドサラダ専門店「クリスプ・サラダワークス」。

(クリスプ・サラダワークス広尾店)

同店は2014年の創業以来、自由度の高い注文スタイルで人気を集め、現在都内7ヶ所に展開している。

2018年10月4日の広尾店リニューアルオープンにあたり、3つのオーダープラットフォーム「完全キャッシュレス・セルフレジ」「モバイルインストアオーダー(店内注文)」「モバイル事前注文」が発表された。

1、完全キャッシュレス・セルフレジ

カチリと共同開発したセルフレジを導入。デザイン性の高い注文画面とシンプルな操作性が特徴である。決済には、クレジットカードまたは各種プリペイドカードの利用が可能だ。

導入した3台のセルフレジにより、顧客が店頭で注文から決済まで全て行える。クレジットカード決済には、コイニー株式会社の提供する「CoineyKit(コイニーキット)」を採用。

2、モバイルインストアオーダー(店内注文)

2017年にリリースされたモバイルアプリ「クリスプAPP」内に、インストアオーダー(店内注文)機能を実装。

顧客はスマホから、最短2タップで注文・決済を完了できる。席を確保したあと、オーダーまでの待ち時間がなくなる。食事中の追加はもちろん、荷物が多い場合や、子どもを連れている際にも席を離れず注文できるのは魅力だろう。

3、モバイル事前注文

モバイルアプリ「クリスプAPP」は、店外からの注文・決済にも対応している。事前のオーダーで準備をするので、顧客は並ぶことなく受け取れる。予約機能もあり、24時間いつでも注文が可能だ。

なぜオーダーをキャッシュレス化・セルフ化するのか

「デジタル領域で日本をリードする飲食チェーンを目指す」というクリスプは、サービスの拡充とキャッシュレス化を積極的に推進してきた。2017年に「クリスプAPP」を導入して以来、すでに全店でキャッシュレス比率が約70%まで増加しているという。

今回のさらなる完全キャッシュレス化・セルフ化の促進には、どのような狙いがあるのか。その目的を「スタッフ」「顧客」「会社」それぞれにとってのメリットから見ていく。

1、スタッフが楽しく魅力的に働くため

飲食店に限らず、接客業では顧客へ必ず確認する項目が多く、一人ひとりの顧客に割ける時間は限られている。結果として、心を込めた接客がしたくても、機械的な流れ作業になりがちだ。

しかし、セルフレジや完全キャッシュレス化を導入することで、注文・会計オペレーションがなくなり、スタッフに余裕が生まれる。その時間をコミュニケーションに充てることで、接客をより豊かなものにできるのだ。

2、顧客の注文体験向上のため

現金を使わないことで、お釣りをやり取りする手間や数え間違いのリスクがなくなり、双方にとって決済に付随していたストレスは減少する。ただ、クリスプ・サラダワークスの狙いはそれだけではない。

『メニューも、サービスも、働き方も、カスタムするから面白くなる。』

クリスプは、これまでも店舗を「ワクワクするような体験と継続的なつながりを生む場所」と捉え、空間づくり、接客、オーダーのとり方、調理動作の見せ方などにこだわってきたという。

セルフレジやモバイルアプリの導入にも、日本をリードする飲食店を目指したクリスプの世界観が表れている。背景となるストーリー、デザインを追求し、機能としてだけでなく注文や決済に伴う顧客体験の「面白さ」も向上させることに注力したのだ。

3、企業が顧客をクラウド上で把握するため

今なお多くの企業が、「売上」という数値に重きを置いているが、顧客の購買モデルは複雑化しており、それだけで経営的な判断するのは困難になっている。

そこで重要視されるマーケティング手法が、売上データやマーケティングデータ、WEB解析データなど、クラウドに集約される様々な値を総合的に分析し、未来予測や意思決定、企画立案などに役立てる「データドリブン」である。

セルフレジやアプリによるキャッシュレス化は、このデータドリブンな店舗を実現するためのツールだ。クラウド上で顧客データのリアルタイムな把握が可能となり、1日単位の売上や客単価だけに惑わされることのない店舗運営に繋げられる。

カチリが目指す、“つまらないを楽しく”する世界

今回のリニューアル店舗でセルフレジを開発したカチリは、2017年に設立されたばかりの会社だ。クリスプを創業した宮野浩史氏が同じく代表を務めており、「飲食店におけるスタッフの働き方と顧客の注文体験を進化させること」を目的としている。

20年以上、飲食業界の最前線で働き続ける宮野氏は、実際に現場で次のような課題を感じていたという。

飲食業界で働く人の多くが、飲食で働くことでしか体験できない特別な魅力や楽しさを感じながらも、同時に生産性の低さ・人不足・働き方などの構造的な課題を抱えている飲食業界の将来に希望を持てなくなっているように思います。

<引用元:株式会社カチリ

辿り着いたのは、「フード × テクノロジー」という答えだ。飲食店のスタッフが顧客や仲間と向き合う時間を増やせるよう、これまでにない技術の開発に目を向けた。

今回、クリスプ・サラダワークスの店舗用に開発されたセルフレジやモバイルオーダーアプリも、顧客のためであると同時にスタッフのためでもあるのだ。「自分たちの問題を誰かが解決してくれるのを待つのではなく、自ら手を動かしてチャレンジしてみよう」という想いが背景に伺える。

テクノロジーが構築する、企業と顧客の新しい関係性

キャッシュレス決済は今、政府の後押しもあって大きな注目を集めている。

消費税増税に伴う景気悪化の対策として、クレジットカードや電子マネーなどによる決済でポイントを還元するなど、戦略の一環としても検討されており、導入は進むだろう。

しかし、こうしたテクノロジーの本質は別にある。先ほども紹介したデータドリブンだ。

一人ひとりの購買状況はもちろん、来店回数ごとの離脱率などの顧客データをクラウド上でリアルタイムに把握し、分析を行える。個別顧客のトラッキング情報を利用すれば、ピンポイントのプロモーション付与など、効果的なマーケティングに活かせるのだ。

データドリブンは、顧客との長い関係性の構築にも有効である。一人の顧客が、取引を通して生涯にわたり企業にもたらすトータルの利益を「ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)」というが、データを元に施策を打つことは、その最大化にも繋がるだろう。

クリスプは完全キャッシュレスやセルフオーダーを通じて、まさにデータドリブンをベースにした「ライフタイムバリュー経営」を掲げている。テクノロジーを導入することで、企業がもっとも大事にすべき「店舗のファンづくり」の新たな可能性が伺える。

ファスト系メガネ屋での販売員として働いたのち、名古屋の某WEB会社に内勤ライターとして入社。現在は、名古屋の某企業グループ会社(ネット回線)/IDENTITY(IDENTITY名古屋・DooR)/名古屋の某WEB会社(金融系)など、フリーランスのライターとして従事。以前より雑貨屋・アクセサリー作家/大学生(建築系)/Web小説家/占い師としても活動しており、執筆領域は金融・テクノロジー・小売・ライフスタイルなど多岐に渡る。

АIЯI

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