小売×テクノロジーのカオスマップで網羅する、2019年の国内リテールテック市場

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小売×テクノロジーのカオスマップで網羅する、2019年の国内リテールテック市場

Text : おぐら まみ / Editor : 吹原紗矢佳

小売業界の課題を解決するリテールテック。その範囲は在庫管理から物流、決済、購入後のデータ分析まで多岐に渡り、国内外の企業が活発に開発や投資を行っている。

本記事では、リテールテックを提供する、特に日本初の取り組みを行った企業に焦点をあてカオスマップにまとめた。2019年は「変革の年」として位置づけられるほどに活発な動きが見える。

各ジャンルの概要や事例に触れつつ、“小売×テクノロジー”の国内市場を網羅的に把握していきたい。

国内におけるリテールテックの必要性

小売業界は深刻な人手不足状態が続いている。帝国データバンクの調査によると、2018年における小売業界の「人手不足倒産」は前年比約40%増。少子化や労働者の賃金増加も受け、対応が急がれている。

人手不足の解消策としてAI技術に注目が集まる。店舗から得られるデータをマーケティングに活かし、少ない人員でより効率的な運営を促せるのが理由だ。人員削減によるコストカットへの効果以上に、直面する課題解消への期待が寄せられているのは、本メディアで取り上げたさまざまな事例でも示している。

それでは、下記のカオスマップをもとに、リテールテックをジャンルごとに整理しつつ、注目したい国内企業のサービスを紹介していこう。

 

在庫管理

店舗経営において長年の課題である在庫管理。在庫の適正化は不良在庫や欠品による機会損失を減らし、また顧客の動向を解析して効果的な商品陳列にも応用できる技術である。

STOCK STREAMS(株式会社トライエッティング)
累計100万品目以上を学習し1年先までの受注数を高精度で予測する、AIを活用した在庫生産管理のクラウドサービスシステム。業種を問わず、季節による変動も考慮して発注数を自動計算する。

MAGELLAN BLOCKS(株式会社グルーヴノーツ)
プログラムせずにIoT、ビッグデータ、機械学習を利用できるクラウドサービスシステム。ある事例では8万点にのぼる商品取扱数のホームセンターで、それまで在庫数と過去の販売データから店舗の担当者が経験則で行っていた発注をAIによって最適化し、在庫の過不足を防ぐ結果が得られたという。

物流・配送

人手不足や賃金上昇により、物流や配達にかかるコストは増加傾向にある。こういった状況を受け、2017年7月に閣議決定された「物流総合施策大綱」ではAIなどの新技術を活用した“物流革命”を推進する方針が示されている。

Loogia株式会社オプティマインド)
配送が1台あたり10箇所を超えるようなルート組みを行っている会社や、配送計画立案が日々必要な会社を対象に、配送ルートの最適化をブラウザで簡単に行えるクラウドサービス。

Dynamic Allocation System® (GROUND株式会社)
既存の経験に頼りがちな物流業界に、最新のテクノロジーや全く異なる業界の知見を持ち込み、配送を再定期化するソリューションを提供。

店内体験

店舗へのリテールテックの導入による顧客体験の向上はECにはない強みであり、無人店舗化やAR・VR技術の利用、ストアロボットの導入といった分野で各社開発を進めている。

  • 無人店舗
    DEEPS(株式会社テクムズ)
    製造業の品質・工程管理、小売業のデータ収集・分析ができる画像認識AIプラットフォーム。競合大手と同等以上の画像処理速度と精度を誇り、導入コストも抑えられる。顔パス認証+年齢・表情・行動などの推定により、一歩先の顧客体験を提供する無人店舗をグローバルに展開する考えだ。

 

  • AR・VRツール
    ココアル(スターティアラボ株式会社)
    ARコンテンツを専門的な知識を使わずに作成できる。チラシや店内POPに利用するほか、閲覧状況などログの解析も可能。

 

  • ストアロボット
    Pepper for Biz(ソフトバンクグループ株式会社)
    感情認識ヒューマノイドロボット「Pepper」の法人向けモデル。店舗受付や案内業務など、事業所に合わせてカスタマイズできる。業界ごとの100種類を超えるテンプレートから選んで簡単に導入できるほか、独自のアプリ開発を受注する認定パートナー企業との開発も可能。

データ分析

顧客行動データと売り上げデータを組み合わせて分析することによって、より顧客ニーズに即した商品陳列や商品開発が可能となる。

  • 店舗管理・購買分析
    ABEJA Insight for Retail(株式会社ABEJA)
    店内の画像データを解析しリピート推定や動線分析によって入店から購買までの
    消費者行動を可視化。POSや天気など既存データと組み合わせることで店舗の課題を洗い出し、改善施策の実施や効果検証までサポートする。

 

  • ビーコン&ロケーショントラッキング
    Beacapp(株式会社ジェナ・株式会社ジェーエムエーシステムズ)
    Bluetooth通信を利用してスマホなどの端末と通信できるビーコン(Beacon)。BeacappはビーコンのIoT活用や対応アプリを簡単迅速に実現するクラウドプラットフォームである。屋内でも顧客の位置情報を正確に把握してトラッキングすることで、特定の位置に近づいた顧客に対して通知を行うといった活用が可能となる。

 

  • リアルタイムシェルフ管理
    RecoPick®(帝人株式会社)
    図書館、工場、医療機関などで実績のあるRFID(無線自動識別)機能による在庫管理システム。ローソンと共同開発したリアルタイム在庫管理システムは、商品棚に敷いたアンテナシートで商品を陳列した時間や、客が手に取った商品の個数を自動認識する。賞味期限が近づいた商品を店員に知らせたり、値引き情報を顧客のスマートフォンに通知したりといった使い方が可能。

決済

QRコード決済やウォークスルー決済で国内でもキャッシュレス化が進む決済技術。馴染みの深いクーポンやポイントの技術はパーソナル化が進み、リアルタイムで価格が変動する「ダイナミックプライシング」といった新しい技術も注目されている。

  • クーポン・ポイント・キャッシュバック
    PointInfinity(株式会社日立ソリューションズ)
    複数のスマートフォン事業者と提携し、自社のポイント管理とともに多様なキャッシュレス決済にも対応。取得した購買データはAI利用をはじめデジタルマーケティングに活用可能。

 

  • セルフレジ
    レジロボ®(パナソニック株式会社)
    精算から袋詰め作業までを完全自動化する業界初のセルフレジロボット。商品バーコードではなくRFIDを読み取る仕組み。そのため、顧客は専用カゴに商品を入れ、セルフレジに置くだけで決済が完了する。

  • QRコード決済
    Origami Pay(株式会社Origami)
    国内でのキャッシュレス決済の先駆け的存在。2019年2月中には提携企業数30,000社に達する見込みで、6月を目処に全国の信用金庫の口座で決済できるシステムをリリース予定。

 

  • ダイナミックプライシング
    throough(株式会社ダイナミックプライシングテクノロジー)
    自社の供給量とユーザーの需要量をベースに価格を自動で変動。期間や割引率、最低価格などカスタマイズした設定ができる。メトロエンジン(メトロエンジン株式会社)宿泊市場のビッグデータをリアルタイムで取得し、人工知能・機械学習技術によって客室単価設定を行う。ホテルシステムと連携し自動での反映も可能。

 

  • ウォークスルー決済
    ローソンCEATEC店(株式会社ローソン
    アジア最大規模のIT・エレクトロニクス展示会「CEATEC JAPAN 2018」に、小売業界でローソンがブースを出展。専用アプリとRFIDタグを利用し、出口ではレジ袋をゲートに通しQRコード読み取るだけで決済が完了する。
  • 決済でいえば、わずか10日間で終了したPayPayの100億円キャンペーンは記憶に新しい。国内キャッシュレス決済市場は、消費税引き上げを前にしたポイント還元のニーズを取り込むべく競争が激化し始めている。野村総合研究所によると、国内のキャッシュレス市場規模は2024年には120兆円を超える見込みだ。ここまで見てきたように、小売業界を革新するテクノロジーは決済だけでなく在庫管理から店内体験、購入後のデータ分析まで多岐にわたり、新たなサプライチェーンを形成しつつある。小売業に対するテクノロジーの導入は人件費の削減が注目されがちだが、顧客体験の向上による付加価値やマーケティングを目的としたデータ分析も重要で、その市場拡大は図り切れない。

    小売×テクノロジーの市場は世界的にはもちろん、国内でも2019年以降飛躍的に伸びるのではないだろうか。