キャッシュレス決済は日本のスタンダードになれるのか?店舗に導入するメリットと障壁への施策

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キャッシュレス決済は日本のスタンダードになれるのか?店舗に導入するメリットと障壁への施策

Text : 江原ニーナ / Editor : 吹原紗矢佳

諸外国に比べ、キャッシュレス決済比率が低い日本。2018年に三菱UFJリサーチ&コンサルティングが公表した調査によると、日本国内のキャッシュレス比率は18.4%(2015年時点)にとどまっており、約90%にものぼる韓国や、アメリカの45%という現状に大きく遅れをとっている。

本記事では、キャッシュレス決済の基礎知識をおさえ、導入のメリットや障壁を乗り越えるための施策を紹介する。

意外と身近なキャッシュレス決済。種類や支払いの方式のキホン

キャッシュレス決済とは、cash(現金)をlessにする(なくす)という言葉のとおり、現金を介さない決済方式を指す。

楽天株式会社の楽天ペイ」、paypay株式会社の「paypay、LINE株式会社の「LINE Pay」などに代表されるような、スマートフォンと連動した決済システムに限らず、クレジットカードや交通系ICカードもキャッシュレス決済の方法の一つだ。

キャッシュレス決済は、「決済のタイミング」により大きく3つに分けられる。

1つ目は、交通系ICカードやプリペイドカードに代表される「前払い型」だ。あらかじめ、カードなどに一定金額をチャージしておき、その金額内で使用する。

2つ目は「即時払い型」で、デビットカードに代表されるように、決済と同時に銀行口座などから代金が引き落とされる。

そして3つ目は、クレジットカードに代表される「後払い型」だ。決済から約1ヵ月ほど後に代金が引き落とされる場合が多い。

交通系ICカードや、公共料金の口座引き落としはキャッシュレス決済の一環であり、昨今話題となっているスマートフォンアプリを利用した決済方法も、その範囲内にあると言える。日本国内では現金への信用度が高く、キャッシュレス決済は浸透しにくいとの見方も存在するが、一般的な生活レベルでは既にあらゆる箇所で活用されているのだ。

CMでも話題に。利用が広まっているQRコード決済

LINE PayやPayPay株式会社の「PayPay」をはじめとするスマホを利用したキャッシュレス決済方法が、認知度を高めている。実際に使用したことはなくとも、名前を耳にしたことがあるだろう。これらは、近年急速に普及が進む「QRコード読み取り型」のキャッシュレス決済システムである。前述した3分類では「前払い型」と「後払い型」を組み合わせた型といえる。

代金を引き落とすタイミングは各サービスによって異なるが、店頭での基本的な流れはシンプルだ。店舗に設置されたQRコードを顧客がアプリで読み取り、金額を確認して支払いをする。または、顧客がスマートフォンにコードを表示し、それを店頭のPOS端末で読み込む方式がある。

特に、店舗に設置されたQRコードを読み取る方法では、これまでのPOS端末を利用できることから、新たな設備を導入する必要がないため、導入ハードルが低く、小規模店舗でも利用しやすい。

PayPay公式ホームページより

便利になるのは利用者だけじゃない。店舗側のメリットとは

東京都内のコンビニエンスストアや飲食店では、「各種キャッシュレス決済サービスが使用できます」といった文言を掲げる店舗も増えている。キャッシュレス決済により、利便性が向上するのは店舗利用者だけではない。

店舗利用者のメリットは、手元に現金がなくても支払いができること、支払いが簡単であること。利用履歴が簡単に参照できたり、利用におけるポイントが付与されたりするのもメリットといえる。また、QRコード決済が使用できる店舗では、スマートフォンだけで支払いが済む点も魅力の一つだ。

また店舗側は、収支を機械が記録するため、現金を扱う業務を効率化できる。精算やおつりの準備など、現金を扱う作業は手間がかかり、精神的負担もあるため、店舗運営に対する現金のハンドルコスト削減の貢献は大きいだろう。

日本のキャッシュレス決済推進に向けた動き

これらのメリットに対し、依然として低いままのキャッシュレス決済比率は、導入に対し一定のハードルがあることを示している。

野村総合研究所がまとめた「キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識」によれば、決済手数料や初期費用の高さがキャッシュレス導入の障壁となっているようだ。

こういった現状を受け、2018年8月、LINE Payは決済手数料を無料にした。さらに、PayPayは「100億円あげちゃうキャンペーン」を実施し、PayPayで支払いをすると、支払額の20%が残高として還元され、さらに40回に1回の確率で支払額の全額が還元されるという取り組みを打ち出した。

これら決済システムはQRコード決済型であり、店舗はQRコードを設置するだけで、初期導入コストはかからない。一例として、PayPayの場合は、開始から3年間は支払い手数料が無料となる。入金手数料は、入金先の銀行がジャパンネット銀行の場合は永年無料で、その他の銀行の場合は2019年9月30日まで無料だ。

そのほか、コイニー株式会社の「Coiney」では、2019年3月31日(日)までの申し込みで、決済端末が無料になるキャンペーンも行っている。このように、各社が店舗がキャッシュレス決済を導入するハードルを下げるための施策を打ち出している。

一方、日本政府は、2025年に開催される大阪・関西万博に向けて、キャッシュレス決済の普及を進めていくと方針だと発表している。

2018年3月に経済産業省が公表した「キャッシュレス・ビジョン」によると、低額の支払時における支払手数料の無料化または低減、金額帯に応じた変動手数料の導入などにより、キャッシュレス決済を導入しやすくなる仕組みの整備も検討されているようだ。さらに、事業者が売上金を迅速に受け取れるよう、清算のための振込手数料への対応についても検討を行うことが望ましいとしている。

店舗側にとって、キャッシュレス決済導入のネックとなっていた決済手数料や、売上金の現金化にかかわる問題がクリアされれば、キャッシュレス決済の普及は大きく広がるだろう。

インバウンド需要への対応策としてのキャッシュレス

日本は現在、諸外国に比べてモバイル決済などの現金を使わない支払い方法の普及に遅れをとっているのが現状だ。韓国では約9割がキャッシュレス決済であり、中国では屋台などでもQRコードなどのキャッシュレス決済が普及している。

日本の現状や今後への可能性は未知数である一方で、2020年の東京五輪はすぐそこに迫っている。2020年に向けたインバウンド観光客の獲得戦略としてキャッシュレス決済を導入し、国内でのキャッシュレス決済が一気に浸透する可能性もある。

キャッシュレス決済の導入は、インバウンド観光客を獲得する上で鍵となるだけでなく、顧客の決済方法に選択肢を与えられるほか、現金をやりとりしたり会計時に時間をロスしたりする必要がなくなり、顧客体験の向上にも寄与しうるだろう。