ビーコン(beacon)とは?導入事例に見る位置特定技術の“今”

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ビーコン(beacon)とは?導入事例に見る位置特定技術の“今”

Text : 結木 千尋 / Editor : 吹原紗矢佳

「ビーコン」は、私たちの暮らしと密接な関わりを持つ技術だ。言葉自体を知らなくとも、日常的に利用する人は少なくない。

「ビーコン」とはいったいどのような技術なのか。概要から導入事例までを掘り下げる。

ビーコン(beacon)とは?特徴とメリット

ビーコン(beacon)とは、電波を用いた位置特定技術を指す言葉である。ホストとなる無線局や端末から電波を発信し、受信したクライアント端末の位置を特定する。そのような仕組みから転じて、技術を利用するための端末そのものを「ビーコン」と呼ぶことも多い。

無線による通信が実用され始めた2000年ごろからよく聞くようになり、ここ数年になってさらに一般化した。その要因は、Bluetooth Low Energy(BLE、以下Bluetooth)の普及にある。かつては無線LANや赤外線通信によって支えられたビーコンの技術だが、近年ではBluetoothによって代替されるケースが増えてきた。ビーコンと言えばBluetoothの技術を指す、とする場合もあるほどだ。ここにはBluetoothが持つ特徴が関係しているという。

普及するBluetooth対応の端末

もともとビーコンに採用する無線技術の選定には、目的による使い分けがある。どのような用途で使用するのか、または誰の位置情報を特定したいのかだ。

例えば、無線LANであれば、一つのアクセスポイントがカバーする範囲は広く、数百メートルに及ぶと言われている。また、消費電力が高く、ホスト端末の導入にコストがかかる点も特徴だ。

これらの点において、Bluetoothによるビーコン技術は使い勝手が良い。カバー範囲は数十メートルと狭いが、消費電力は少なく導入コストも低い。現代ではBluetooth機能を備えるスマートフォン端末が普及していることもあり、個人へのアクセスにおいても無線LANと比肩し得る存在になりつつある。

ビーコンとGPSの違い

位置情報の特定と聞いたとき、多くの人がGPS(Global Positioning System)を連想するだろう。広義にはGPSもビーコン技術だと言えるが、ここではBluetoothによるビーコン技術とGPSを区別し、両者の違いについて解説する。

ビーコンとGPSの最も大きな違いは、電波の発信源によるカバー範囲の広さだ。

GPSは、人工衛星から発信される電波をクライアント端末が受信することで、位置情報を特定している。そのため、屋外では広範囲にわたる位置を特定できるが、屋内や地下など、遮へい物のある環境を苦手とする。

一方で、Bluetoothを活用したビーコンは、特定の場所に設置されたホスト端末からの電波によるものだ。通信可能範囲が数十メートル程度と狭いが、遮へい物のある環境でも問題なく利用できる上、位置特定の精度も高い。

GPSの応用技術「カーナビゲーション」

また両者は、情報伝達の特性にも違いを持つ。

GPSは単方向の情報伝達システムであり、クライアントからホストへの情報伝達を行っていない。ホストとなる人工衛星は情報を送信するだけ、クライアント端末は情報を受信するだけの仕組みだ。

つまり、応用のためにはそれぞれのサービスでシステムを整える必要がある。たとえば、カーナビゲーションによるルート検索は、GPSによるものではなく、そのサービス内で整えられた機能といえる。

対して、Bluetooth活用のビーコンでは、双方向の情報伝達が可能だ。ユーザーとなるクライアント側からでも情報を発信できる。この点は大きなメリットだろう。

ビーコンの導入事例

まだ新しい技術という印象のあるビーコンだが、実は多くの分野で実用化されている。ここからは主な事例について紹介する。

LINE BeaconなどによるO2Oマーケティング

O2Oとは、「Online to Offline」の略語。インターネットから実店舗、あるいは実店舗からインターネットへと、シームレスに顧客を誘導するマーケティング施策をO2Oマーケティングと呼ぶ。

GPSのような単方向のビーコンでは効果的なマーケティングとならないため、Bluetoothによる双方向のビーコンが活用されやすい。以下で紹介するケースは、どちらもBluetoothを活用したビーコンの導入事例だ。

2014年、アパレル大手の株式会社ナノ・ユニバースは、ビーコン活用によるスマートフォン用のストアアプリを発表した。このアプリでは、スマートフォンに搭載されたGPSとBluetoothの機能を使い、ユーザーの位置情報を把握。店舗来店によるポイントを自動で貯められるほか、近隣店舗の在庫状況も参照できる。O2Oマーケティングにおけるビーコン活用事例として大きな先例となった。

LINE Beaconを活用したKIRINの自動販売機『Tappiness(タピネス)』

最近では、LINE株式会社が提供するLINE Beaconが有名だ。これはメッセージアプリのLINE内にある機能で、有効化し対応店舗を訪れると、クーポンなどが自動的に配信される仕組みとなっている。インフラ化するLINEの取り組みだけに協賛する企業は多く、近年におけるビーコン活用の最たる例と言えるだろう。

施設・店舗における実例

2017年、高知県立図書館(現オーテピア高知図書館)は、ビーコンによる図書管理の実証実験をおこなった。専用のスマートフォンアプリ「びーこん館」に搭載されたビーコン機能によって蔵書の保管位置を把握するものだ。現在、この実証実験は終了しているが、公共施設における数少ないビーコン活用事例となっている。

キャッシュレス決済サービス『Origami Pay』では、ビーコンによる支払いもできる

また、話題を集める無人コンビニもビーコン技術に可能性を見出す。より正確な位置特定ができるBluetoothのビーコンを、キャッシュレス決済へ応用する取り組みだ。メリットは、セルフレジより安価に導入できる点にあるという。

日本では、労働者不足などからコンビニエンスストア無人化を目指す取り組みが活発化している。フランチャイズも含め、全国に展開する全ての店舗でセルフレジを導入するには、コスト面の問題が大きい。ビーコンによるキャッシュレス決済によって、全国展開が現実的なところまでコストダウンできるという。

ビーコン技術は私たちの暮らしに馴染みやすい。誰もが気づかぬところでビーコンを利用していると言っても過言ではない。IoTやAIなどによって暮らしの効率化が進む昨今、ビーコンはかけがえのない技術となっていくのかもしれない。