JR赤羽駅に登場したAI無人決済コンビニを体験!現状の成果と課題はどこにある?

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JR赤羽駅に登場したAI無人決済コンビニを体験!現状の成果と課題はどこにある?

Text : 江原ニーナ / Editor : 吹原紗矢佳

交通系ICカードをタッチして入店し、欲しいものを手に取る。あとはレジに並ぶことなく再びカードをかざすだけで、決済が完了。客の動きに目を配るのは天井に設置された16台のカメラであり、決済は出口付近に設置されたAI無人決済システム「スーパーワンダーレジ」で行う。
まるでアニメの世界に登場するような近未来感に溢れたコンビニが、10月17日よりJR赤羽駅に登場した。5、6番線ホーム上に設けられた同店舗では、同日より約2ヶ月間、実証実験が行われる予定だ。
IT領域に感度の高い人や話題性も手伝って、ホームの一角に設置された小さな店舗でありながら、一時は30分待ちにもなったAI無人決済コンビニ。現在の技術を用いてできること、できないことを探るべく、取材に向かった。

入口の逆側から見た店舗。公式発表によると、店内の広さは約27平方メートルである

店舗で商品を買うまでの流れ

入店後の店内では、約140種類の商品から購入したいものを手に取る。最後に出口付近にある決済用の機械の横に立つと、スクリーンに合計金額が表示される。金額が間違っていないかを確認したら、あとは再びICカードをかざすだけで、決済が完了する。

入店前に列で渡される注意事項。使用できるICカードの種類や、入店から決済までの流れが説明されている。

赤羽駅のAI無人決済コンビニでできること

1.交通系ICカード9種類で決済できる

同店舗はJR東日本管轄の赤羽駅に設置されているが、同社発行のSuicaのみならず、他のICカードでの決済も可能である。使用可能なICカードの種類は以下の通りだ。

・Suica(JR東日本)
・PASMO(東京メトロなど)
・nimoca(西日本鉄道)
・Kitaca(JR北海道)
・HAYAKAKEN(福岡市営地下鉄)
・TOICA(JR東海)
・manaca(名古屋市交通局など)
・ICOCA(JR西日本)
・SUGOCA(JR九州)

モバイルSuicaには対応しているが、現金やApple Pay、クレジットカードでの決済には対応していない。

写真左:店舗入口の、ICカードをタッチする機械。写真右:実際にカードをかざす部分。カードが認識されると、自動でドアが開く。

2.カメラや商品棚のセンサーがあるためレジを通さず購入できる

店舗内の天井には小型のカメラが16台あり、商品棚には買い物中に気づかないほどさらに小さなカメラが約100台設置されている。これらが買い物客の行動を認識・追跡し、随時買い物客が手にした商品と合計金額を把握している。そのため、従来のように決済時にレジを通す必要も、レジを待つ時間もなく、自動で決済が完了する。

また、商品をカバンの中に入れる行為も認識されるため、万引き防止効果も期待されている。

NewDaysなどの一部のコンビニではすでにセルフレジの導入も進んでいるが、いずれも自分でレジまで行き、1つ1つバーコードを通し、袋詰めをするという一連の流れが必要だ。一方、今回の無人決済コンビニでは一度入り口で交通系ICカードをかざせば、あとは好きな商品を手に取り、出口で合計金額を確認するだけでスピーディーに買い物を済ませられる。通勤前など時間のない人にとっては、レジでの支払いや袋詰めを断る手間さえ省けることは大きなメリットであるほか、人手不足の解決や人件費の削減も望める。

出口で決済をする男性。足元の赤い枠内に立つと、スクリーンに購入するもの一覧と合計金額が表示される。間違いがなければICカードをかざして決済が完了する。

3.データドリブンでより効率的な商品管理ができる

AI無人決済システムは、購買履歴に加えて、性別や年齢などのマーケティングデータを得られる。これにより、商品の発注や在庫の管理といった店舗責任者の経験に頼る場合が多い業務が、よりデータドリブンで測れるようになり、効率化できるだろう。

現在は、店舗での支払い方法というと、現金、ICカード、クレジットカード、QUOカードなどさまざまで、購買情報が分散している。一方、今回のような無人決済店舗では、ICカードによる決済情報が一括して蓄積される。これにより、売れ筋や不人気の商品が一目瞭然になり、無駄のない発注が可能になるだろう。また、気温や季節などの環境データと連動すれば、効率的な売上予測や商品管理も期待できる。このような商品管理へのデータ活用は、従来は経験に頼っていた作業の自動化に貢献する見込みがあるほか、適正量の発注で過剰な在庫を減らせることから、将来的にはフードロスなどの社会問題の解決に寄与する可能性もあるだろう。

 

AI無人決済コンビニではできないこと

1.現在は、同時に一定人数までしか処理できない

今回の実証実験店舗では、カメラやAI技術に限界があるため、同時に入店できる人数に制限がかけられている。当初は一度に3人までの入店が可能であったが、現在は2人に縮小されている。しかし、実際に店舗として実装されると、入店する人数をコントロールするのは現実的ではない。この点には技術発展の余地があるといえる。

2.飲食物以外は売っていない

同店舗で販売されているものは、パンやスナック、お茶、ジュースなどの飲食物約140種類である。通常多くのコンビニで販売しているような、ステーショナリー、マスクなどの衛生製品、雑誌、新聞、お酒、タバコなどは販売されていない。

また現在の技術では、手に取ったものがそのまま合計金額に追加されるだけで、本人確認や年齢確認は行われない。そのため、アルコールやタバコなど購入に制限があるものに関しては、技術向上や新たな策を講じることが必要だろう。

3.取ったものは元の場所に戻さないと正しく認識できない

同店舗のAI無人決済システムは、天井に設置されたカメラが買い物客を認識し、商品棚に設置されたセンサーと連動して手に取った商品を認識、そこから自動的に購入金額を算出する、というフローで実現している。

そのため、手に取られた商品が、元あった場所に戻されない場合、想定していない動きを取ることになり、正しい合計金額が計算されなくなる可能性がある。事前に渡される注意書きにも「商品を別の場所に戻さないでください」と記載されている。

しかし、実生活においては手に取ったものを別の場所に戻す事態は十分に考えられる。子どもなど、まだ分別のつかない客も想定できる。この点についても技術発展の余地があるだろう。

 

近未来コンビニの実験は始まったばかり

筆者が店舗に足を運んだのは平日の昼間だったため、待ち時間は5分ほどで入店できたが、夕方などの混雑する時間には行列ができることもあるようだ。入店から決済までの一連の流れは、レジで人との接触がない以外は通常の店舗となんら変わらず、あっけなさを感じるほどにスムーズであった。

今回の赤羽駅のAI無人決済店舗の営業時間は、平日朝10時から夜8時で、土日祝日は営業していない。店内の撮影は禁止されているほか、前述のとおり規定のICカード以外には対応していないため、注意が必要だ。

昨年11月に大宮駅で、同様の実証実験が1週間行われたが、今回は2ヶ月と前回より長めの期間設定になっている。また駅構内に設置されているため、赤羽付近に立ち寄った際は、近未来のコンビニを体験するために店舗へ足を運んでみるのもいいだろう。かつてSF映画や漫画は、近未来の姿として「ロボット社会」を描いていたが、AI自動決済ならば店員役のロボットさえ登場しない。私たちは、かつて描いた夢の社会を超える入り口にいる、と言えるのかもしれない。